Xファイル
ザ・ムービー

1998/09/17 よみうりホール
テレビやビデオでお馴染みの人気シリーズが劇場に登場。
でもこれは、テレビでもいいんじゃない?by K. Hattori


 アメリカでは5月に放送が終了したテレビ版の第5シリーズに引き続き、サマーシーズンの目玉作品として全米公開された映画版。第5シーズンの最終話「ジ・エンド」で閉鎖されたXファイル部門が、三たび復活するまでを描いている。おそらくこれで、第6シリーズへの橋渡しにするのだろう。作り手側としては、テレビシリーズを見ていない観客にも世界観の概略がわかるように努力したつもりなのだろうが、これはおそらくチンプンカンプンだと思う。テレビシリーズで何度も登場した黒色虫(ブラックオイル)や、宇宙人の植民計画、ウィルスとワクチン、謎めいたスモーキングマンやウェル・マニキュアド・マンなどの役割が、映画だけでは把握しにくいと思うのだ。テレビシリーズを見ている人にとっては、いろいろと新発見もあって楽しいのだが、それでもこの程度の内容なら、第6シーズンの最初に前後編で放送すれば済む話だとも思うんだけどな……。

 映画版では新たに重要な人物が2名登場する。ひとりは主人公モルダーの父とは古い馴染みで、どういう訳か陰謀の内情に詳しい産婦人科医カーツウェル。演じているのは『エド・ウッド』でアカデミー助演男優賞を受賞した名優マーチン・ランドー。もうひとりは、宇宙人たちと内通する謎の組織のリーダー格ストラグホールドで、演じているのは『シャイン』で厳格な父を演じたアーミン・ミューラー=スタール。今まで「X−ファイル」はアメリカ中心に物語が進展することが多かったのだが、ストラグホールドの登場で組織が世界規模のものであることがはっきりしてきた。ウェル・マニキュアド・マンがイギリス人だということも、じつは初めて知ったんだけど……。これってどこかに出てきましたっけ?

 今回一番驚いたのは、テレビシリーズでも何度も登場した黒色虫(ブラックオイル)が、じつは宇宙人の体液だったということと、その機能が明らかにされたこと。ただこのアイデア自体は、『エイリアン』シリーズに原型があるから新鮮味はない。クライマックスは『エイリアン』シリーズと『アライバル/侵略者』と『遊星からの物体X』を混ぜたようなイメージで、どこにもオリジナリティがないんだよね。最後がこれでは盛り下がるぞ。むしろ中盤にあった、砂漠の中のトウモロコシ畑やエアドームの方がビジュアル面ではユニークだった。

 どうせテレビ版の続きをやるなら、レギュラー格の登場人物は全員登場させてほしかった。例えばモルダーの天敵ジェームズ・スペンダーや、謎の多いアレックス・クライチェックなどが登場しなかったのは寂しい。せめて台詞の中で、名前だけでも出してくれると面白かったのに。ローンガンメンの3人も、病院に見舞いに来るだけなんて寂しいぞ。もっと何か芸をやれ!

 最初は実在のUFO事件や超常現象に取材していたこのシリーズも、話を広げすぎて取り返しのつかないレベルまで来てしまった。話のスケールに比べて、主人公のモルダーとスカリーが弱いような気がするんだけど……。

(原題:THE X FILES)


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