あぶない刑事フォーエヴァー
THE MOVIE

1998/09/04 東映第1試写室
10年以上にわたって続いた人気シリーズがこれで完結?
映画版第5弾はTVスペシャルの続き。by K. Hattori


 昭和61年から日テレ系で放送された異色刑事ドラマ『あぶない刑事』から生まれた、映画版『あぶない刑事』シリーズ第5弾。僕はテレビ放送とも映画版とも無縁だったので、作品としての論評は避ける。今回の特徴は8月28日に日本テレビ系の「金曜ロードショー」で放送された『あぶない刑事フォーエヴァー/TVスペシャル'98』から、9月12日に東映系で公開される『あぶない刑事フォーエヴァー/THE MOVIE』が、大きなドラマの前後編になるというメディアミックス作戦を打ったこと。今回はTVスペシャルのビデオも9月2日にさっそく発売してしまうなど、視聴者を一気に劇場まで引っ張り込んでしまおうという勢いが感じられる。こうしたテレビと映画の連続性は、以前フジテレビと松竹が『パ★テ★オ』で試みたことがある。これはテレビ視聴者を劇場に呼ぶ効果は大きいだろうが、逆にテレビ放送を見逃した人をスポイルしてしまう危険も持っている。今回ビデオをすぐに出したのは、そうした「放送見逃し組」対策なのだろう。まったく頭がいい。

 僕もじつは「放送見逃し組」だったので話に付いていけるかどうか大いに心配したのだが、これは杞憂に終った。TVスペシャルでは永澤俊矢が狂暴なテロリストを演じていたが、今回はその上役の加藤雅也が新たに登場し、永澤俊矢は物語から大幅に後退してしまう。個人的には加藤雅也より永澤俊矢の方が好きなので残念なのだが、こうした敵役の交代によって映画版をTVスペシャルと切り分けたのは正解だったと思う。もっともこれはTVスペシャルを見逃した人間にとっての「正解」であって、放送をきっちりと見た熱心なファンにとって「正解」なのかどうかは、ちょっとわからない。

 スケールの大きなアクションシーンが売りの映画だと思うのだが、デジタル合成を使った『スピード2』ばりのクライマックスはかなり大味。このシーンだけでかなりの製作費を奮発しているはずですが、観ているほうとすれば「しょせんは合成」「どうせ助かる」と覚めた目でながめてしまう。TVスペシャルの方で大規模な銃撃戦をやりつくしてしまったせいか、この映画版では派手なガンアクションがあまりないように思える。それに映画の中のどんなアクションシーンより、エンドクレジットで流れた過去の名シーンからのダイジェストのほうが迫力があったというのも、ちょっと寂しいね。テレビ版から受け継がれている各キャラクターの描き分けなどは、ある種のファンサービスだろうか。大きなドラマが裏で進行しているのに、表面的には細かなエピソードが連続していることに目を奪われてしまうのが少し残念かも。

 ラストシーンには唖然としてしまって、この映画がシリーズ初対面の僕はともかくとして、長年のファンたちは目が点になるんじゃないでしょうか。僕は何かどんでん返しがあるのだとばかり思って、エンドクレジットの最後の最後まで期待していたんですが……。おい、本当にそれでいいのか?


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