ランナウェイ

1998/08/07 GAGA試写室
『フィフス・エレメント』のオカマDJ、クリス・タッカー主演最新作。
じつにテンポのいいアクション・コメディです。by K. Hattori


 リュック・ベッソンの大バカ映画『フィフス・エレメント』で、主演のブルース・ウィリスを完全に食う名演技を見せたクリス・タッカーが、再びキーキー声で挑んだ最新アクション映画。共演はB級映画の帝王、アメリカの哀川翔ことチャーリー・シーン。監督はミュージック・ビデオ出身のブレット・ラトナーで、これが彼のデビュー作になります。脚本は『トイストーリー』でアカデミー賞にノミネートされた、ジョエル・コーエンとアレック・ソコロウのコンビ。これだけ見ても、特別どこがすごいんだかよくわからない作品ですが、これがなかなか面白くて、またしても意外な拾い物でした。

 タッカー演じる主人公フランクリン・ハチェットは、どんなチケットでも舌先三寸の技術で売りさばくダフ屋。ある日警察に逮捕さるが、囚人輸送バスが武装した一味に襲われ、彼も拉致されるようにヘリコプターに押し込まれる。襲撃犯たちの目的は、ハチェットと鎖でつながれている男を助けること。手錠を切断してしまえば、ハチェットに用はない。男たちの殺意を感じて、ヘリから海面にダイビングしたハチェットだったが、この瞬間から、彼は警官殺しのお尋ね者になってしまう。濡れ衣を晴らすには、バス襲撃の真犯人を突き止めるしかない。ハチェットはTVレポーターのジェームズ・ラッセルに助けを求め、独占取材と引き換えに協力を依頼する……。

 白人の主人公に黒人の相棒がくっついて……という映画は多いが、白人と黒人の立場を逆転させたのが新しい。役者としての年季の違いで、クリス・タッカーとチャーリー・シーンが拮抗して見えたり、時にシーンがタッカーを食ってしまう場面もあるが、おおむねタッカーの一人舞台。金も力もないチンケな町のチンピラが、よく回る舌と己の機転だけで窮地を乗り越えて行く様子が、じつにテンポよく描かれている。物語自体はアクション映画の水準を大きく超えるものではないが、タッカーのキャラクターが物語を2倍にも3倍にもふくらませているのは間違いないだろう。逆にいえば、タッカーを生理的に受け付けないという人は、まったく駄目な映画だと思う。僕は『フィフス・エレメント』でタッカーに注目したので、その点ではばっちりOK。彼の魅力全開の、とても面白い映画として楽しめました。

 クライマックスはオリンピック・スタジアムでの、壮絶な銃撃戦。キャンデーをなめながらバズーカー砲をぶっぱなす、幼なじみのギャングがじつにかっこいい。人相風体から声まで、まるっきりマイケル・ウィンコットそっくりの黒人で、てっきり本人が黒塗りメイクで出演したのだとばかり思っていたら、あとで別人であることが判明。でも似ている……。

 物語のテンポのよさと俳優の魅力だけでグイグイ引き付けるタイプの映画なので、この面白さを文章化するのはなかなか困難。大スター主演のアクション大作にはない軽さが身上の映画なので、あまり大きな期待もせず、軽い気持ちで観ると楽しめると思います。

(原題:MONEY TALKS)


ホームページ
ホームページへ