スレイヤーズ
ごぅじゃす

1998/07/30 東映第1試写室
リナとナーガのコンビがドラゴン軍団に襲われた!
人気アニメシリーズ第4弾。by K. Hattori


 魔道士のリナとナーガのコンビが活躍する、人気アニメシリーズ第4弾。『スレイヤーズ』は小説やマンガやTVアニメやOVAなど、多方面に展開している人気シリーズなので、「第4弾」と言っても、実際には膨大な作品群の中のひとつでしかない。僕は昨年の『スレイヤーズぐれえと』と今回の映画しか観ていないのだが、個人的には昨年の映画の方が面白かったように思った。今回の映画は十分にニヤニヤできるけど、前作のような爆笑シーンがあまりないのが残念。でもこうした作品間のバラツキも、ある程度はしょうがないのかもね。それに『天地無用!』と2本立てだった昨年と違い、今年は併映作品が『機動戦艦ナデシコ《劇場版》』ですから、メインは明らかに向こう側なんだよね。

 市場が人で賑わうコルドロン・シティにやってきたリナとナーガは、突然襲ってきたドラゴン軍団を魔法で撃退。さらに追撃しようとしたところを、王の衛兵たちに止められる。じつはドラゴン軍団を率いて町を襲っているのは、領主ロード・カルバートの娘マレーネだという。この父と娘は些細なことが原因で、王宮を二分する壮大な親子喧嘩の真っ最中。些細な原因というのが、「お小遣いの値上げ」だというから馬鹿にした話です。リナは父親側に助っ人として雇われ、ナーガは娘側に雇われて、主人公たちはまたしても敵味方に分かれることになる。この展開は、シリーズの黄金パターンです。

 この映画は中心人物がリナとナーガのふたりだけで、最初は仲良く旅を続けていたふたりが、事件に巻き込まれて敵味方に分かれ、いつもリナが勝つというのがパターンになってます。ふたりの争いを利用して漁夫の利を得ようとする本当の悪党に、リナとナーガが力を合わせて立ち向かおうとするパターンもある。この物語において、周辺人物の役割は物語を進めて行くことではなく、リナとナーガを仲違いさせる原因を作ることであったり、リナとナーガを仲直りさせる原因を作ることだったりする。リナとナーガのキャラはすごく立っているのに、周辺のキャラクターがひどく薄っぺらなのは、こうした物語の構造上、どうしても避けられないことです。

 主人公ふたりのキャラクターがかなり強烈なものなので、物語をふっくらと仕上げるには、それに対抗できる周辺人物を配置して行く必要がある。今回はドラゴン軍団という人間以外のキャラクターに頼った結果、背景となる物語の描写がお留守になっている。前作『スレイヤーズぐれえと』は、町を二分する貴族同士の争いにゴーレム職人の父子が巻き込まれ、そこにリナとナーガがさらに巻き込まれるという物語の二重構造があった。今回の作品は、それに比べるとどうしても薄っぺらだ。お小遣い値上げ闘争が父娘の際限ない戦闘にエスカレートするというアイデアを使うのなら、例えばここに母親をひとり放りこむだけで、物語は一段と複雑になったと思うし、詰めこめるギャグの数やオチのつけ方も違ってきたと思う。面白いシリーズだけに、今回は惜しい。


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