アンドロメディア

1998/07/07 松竹第1試写室
死んだ少女の記憶をコンピュータに移植するSFファンタジー。
SPEED主演のファンタジックな青春映画。by K. Hattori


 人気アイドルグループSPEEDの初主演映画と言うより、映画ファンにとっては三池崇史監督の最新作として期待されるであろう作品。僕も多分にもれず「三池作品」として期待していたのですが、内容はジャニーズJr.主演の『新宿少年探偵団』よりはマシだけど、映画としては相当デタラメな作品でした。竹中直人やクリストファー・ドイルが重要な役で出ているなど、名前を聞くだけで映画ファンが驚く配役もあるのですが、話自体がどうしようもないからなぁ……。この映画を観るなら、むしろ同じ日に封切られる三池監督の別の映画『BLUES HARP』を観た方がいいです。次は秋公開の『岸和田少年愚連隊・望郷』に期待するしかないね。

 交通事故で死んだ少女・舞は、父親のコンピュータの中で「舞の完全なコピー、AI(アイ)」として甦る。この最先端ソフトウェア研究を狙う謎の組織は、アイを奪取すべく舞の父親を射殺。間一髪でインターネットの中に逃れたアイは、かつての舞の級友たちの助けを借りて、組織の追及のから逃れようとする。だがここに、天才ハッカーだった舞の異母兄まで加わり、物語は三つ巴の展開になってくる。はたしてアイの運命は……。

 死んだ子供を最新テクノロジーで蘇らせるというアイデアは、手塚治虫の古典的SF漫画「鉄腕アトム」と同じ。『アンドロメディア』は、それをコンピュータの中のバーチャルな人格にしている点が新しい。定期的に記憶をバックアップしていた舞から、最新の記憶を移植されたアイだが、彼女には舞が死の直前にボーイフレンドのユウと交わした口づけの記憶が存在しない。彼女の最後の記憶は、ユウに愛を告白できず、悲しい気持ちを味わった思い出だけ。ユウに助けられたアイは、自分にはない舞の記憶を探そうとする。つまりこの映画には、舞(アイ)とユウのラブストーリーという側面がある。

 映画のストーリー上最大の欠点は、アイを狙う謎の組織や、組織とも対立する舞の異母兄の目的が、最後までまったくわからないこと。アイの存在が、彼らにどんなメリットをもたらすのか。彼らにとってのメリットが、それ以外の人々にどれだけのデメリットになるのか。それがまったくわからない。クライマックスに登場する大仰な機械の仕組みも謎だし、舞の異母兄の死もわけがわからない。こうした不明確さが、映画のサスペンスを殺している。アイを守ろうとする仲間たちが、アイの立場にどれだけ親身になっているのかも疑問。アイは舞の完全なコピーではあるけれど、現実の舞は間違いなく交通事故で死んでおり、アイはそのコピーでしかない。言って観れば、世界にひとつしかない美術品の、精巧なレプリカみたいなものです。どんなに精巧なレプリカであろうと、本物と同等の価値を持つことはないはずです。

 アイの存在をノートパソコンにしてしまったのも疑問。彼女はネットに自由に出入りできるのだから、危なくなったらネットの中に逃げ込めばいいじゃないか。そうすれば、彼女は永久に生きられたはずなんだけど……。


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