怪傑紫頭巾
總輯版

1998/07/03 国立近代美術館フィルムセンター
阪妻と傳次郎扮の初共演映画。役人の公金横領を紫頭巾が暴く。
昭和24年製作の時代劇で、当時大ヒットした。by K. Hattori


 昭和24年に公開された『佐平次捕物控・紫頭巾』と『佐平次捕物控・紫頭巾解決篇』を再編集して1本にまとめた總輯版(総集版)。監督はマキノ正博。これは当時大ヒットして、上映館である日劇の周囲を客が取り巻いたと言う。阪東妻三郎と大河内傳次郎という大スター同士が共演する豪華さに加え、戦後占領軍に製作を制限されていた本格時代劇が、久々に観られるという喜びによるものかもしれません。今観ると、この映画にはチャンバラシーンがないし、刀で人を斬るシーンがあっても決定的な瞬間はごまかしており、かなり歯切れの悪い印象がある。それでも当時の観客は、阪妻と傳次郎が共演しているだけで嬉しかったんでしょうね。

 寿々喜多呂九平原作の『紫頭巾』は戦前にも何度も映画化されています。1923年、最初に『紫頭巾浮世絵師』を撮ったのは、日本映画の父・牧野省三その人。つまり省三と正博は、親子2代に渡って『紫頭巾』を撮っているわけです。『怪傑紫頭巾』の主人公は、紫頭巾と目明かし佐平次ですが、佐平次が登場する映画は『紫頭巾』の他にも何本かあり、また紫頭巾の映画も、戦後に何本か撮られている。つまりこの映画は、ふたりの時代劇スターが共演する映画であると同時に、ふたりの時代劇ヒーローが共演する映画でもあったらしいのです。ちなみに、今のところ最後の『紫頭巾』映画と思われるのは、昭和38年製作の『変幻紫頭巾』。監督が工藤栄一、脚本が加藤泰、主演は大友柳太朗という顔ぶれです。

 今回は週の後半で疲れがたまっていたせいか、映画の途中少し眠ってしまった。古い映画で録音が悪いせいか、台詞が聞き取りにくくて、人物関係などがうまく飲み込めない。加えて少し寝てしまったので、ますます映画の内容がよくわからない。話はたぶん、以下のようなもの。

 佐渡の金山から黄金を不整に持ち出し蓄財していた役人が、不正を隠すために無実の男を牢につなぎ、口のきけない娘を監禁して真実を闇に葬ろうとする。阪妻扮するところの正義の味方紫頭巾は娘を救出し、獄中の男から真実を綴った日記を手渡されたことで、事件の全容を知る。大目付に訴え出るタイミングを計りつつ、事件の決定的な証拠を押さえようとする紫頭巾は、能役者として悪党の江戸屋敷に潜入し、絵師に化けて屋敷に居着き、事件の証拠を探ろうとする。大河内傳次郎が演じている目明かし佐平次は、紫頭巾探索のために働いている中で、いつしか紫頭巾の正体と目的を知り、陰ながら彼の助けになるために働きはじめる。

 2大スター共演をうたいながら、実際にふたりが顔を合わせるのは最後の最後にほんの少しだけ。紫頭巾には能役者や浮世絵師という別の顔があるのだから、そのあたりでもう少しふたりを密接にからめておくと、クライマックスがもっと生きてきたと思うんですが……。僕が寝ているうちにそんな場面があったのかもしれませんが、ちょっと気がつかなかった。ラストは大チャンバラなしでも、結構かっこよくビシッと決まるけどね。


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