リプレイスメント・キラー

1998/06/24 徳間ホール
香港映画ファンが待ち望んだチョウ・ユンファのハリウッド・デビュー。
香港映画テイスト満載のアクション映画です。by K. Hattori


 香港アクション映画の帝王、チョウ・ユンファのハリウッド・デビュー作。共演は『ニューヨーク・デイドリーム』で金城武と共演し、アジア俳優との共演が続くミラ・ソルビーノ。製作総指揮には香港時代にユンファと数々の映画を作り、ハリウッド進出3作目の『フェイス/オフ』で大成功を収めたジョン・ウー。監督はミュージック・ビデオやCMで活躍してきた、アメリカの若手監督アントワ・フークワ。これが監督のデビュー作ながら、映像作家として身につけたテクニックを駆使して、全体をキリリとまとめあげた。

 ジョン・リーは組織に母と妹を人質に取られ、命じられるまま過去2件の暗殺に手を染めた殺し屋だ。しかしボスであるウェイが、麻薬捜査の刑事に射殺された息子の仇を討つため、刑事の息子を殺せとリーに命じたとき、彼はこの命令に逆らわざるを得なかった。罪のない子供を殺すことに、どうしても耐えられなかったからだ。この一件で、リーは組織の殺し屋から、一転、今度は組織から命を狙われることになる。中国本土に残って居る母と妹の命も危ない。リーは中国に戻るのに必要な出国書類を作るため、偽造屋メグの部屋を訪ねる。しかしちょうどその時、ウェイの放った刺客たちがリーの命を奪うため、メグの部屋になだれ込んできた……。

 義理人情のヤクザ世界と家族愛の板挟みという、香港ヤクザ映画にもよくあるパターンの物語。チャイナタウンや寺院など、エキゾチックな映像もたっぷり。こうしたエキゾチズムは、マーク・ダカスコ主演の『Cryingフリーマン』などでも見られた、「欧米人から見たアジア」のステレオタイプですが、まずまずよくできてます。アクションシーンでは銃弾が雨あられと降り注ぎ、スローモーションやクローズアップを多用したケレン味たっぷりの映像を見せる。監督のフークワは、ジョン・ウーの映画が大好きなのではないでしょうか。映画のそこかしこから、香港映画の匂いがプンプンします。これは香港アクション映画のエッセンスを抽出して、ハリウッドでリメイクしたという感じの映画です。こうした「米国製香港映画」を成立させるために、チョウ・ユンファという役者が必要だったのかもしれません。

 ジョン・ウーが製作総指揮していると言っても、『フェイス/オフ』ばりの男泣き映画を期待すると肩透かしでしょう。刑事の子供をターゲットにするという設定は、立場を変えた『フェイス/オフ』みたいですけどね。あくまでも、新人監督のデビュー作、よくできたプログラム・ピクチャーとして楽しむべき映画です。これ以上手を広げる必要を僕は感じないし、これはこれでよくできた映画だと思います。多くを望んではいけない。

 しかし、現在のハリウッドでアジア人のスターが活躍しようとすると、どうしても「中国系マフィア」にからんだ役になってしまうのですね。リー・リンチェイことジェット・リーも、『リーサル・ウェポン4』で悪役としてハリウッド・デビューするようだし……。

(原題:The Replacement Killers)


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