ダウンタウン・シャドー

1998/05/12 ユニジャパン試写室
金城武と陳小春主演のスパイ・アクション映画。大作です。
キャラクターの特徴づけに一工夫ほしい。by K. Hattori


 金城武主演のスパイ・アクション映画。最新警報装置を備えた企業ビルに忍び込み、機密情報を盗み出すベテラン産業スパイのジャッカルとキャッシュ。彼らはある日、香港公安からある仕事を依頼される。イギリス諜報部の香港支局から、偽ポンド札の原版を盗み出してほしいというのだ。じつはイギリス諜報部の幹部職員が裏切りを働き、犯罪組織から押収した偽札の原版を、第三国に持ち去るつもりなのだという。これを防ぐには、原版を盗み出すしかない。身柄を拘束され、預金口座も凍結され、やむなく依頼を受けた主人公たち。原版強奪はまんまと成功したが、じつは彼らに仕事を依頼した香港公安の幹部が食わせもので、彼らを裏切り原版を持って逃走してしまった。この瞬間から、主人公たちはイギリス諜報部と香港公安の両方を敵に回すことになる。彼らは原版奪回と死んだ復讐のために立ち上がる……。

 ストーリーとしては『ミッション:インポッシブル』あたりのセンを狙っているのでしょう。しかし主人公たちが全員10代後半から20代そこそこの若い連中ばかりでは、各分野のスペシャリストもただのオタクにしか見えない。これでは本格スパイ映画というより、『七人のおたく』ではないか。全体にあと10歳ずつ年齢を上に設定すると、もう少し渋い味わいが出てきたと思うけどね。金城武とチャン・シウチョン(陳小春)は若手スターなのでやむを得ないとしても、その他のメンバーにもう少し年齢のバラツキがあった方がよかったと思う。ま、企画自体が「若い俳優を使う」ことを前提にしていたんでしょうけどね。それならそれで、脚本の方にもう少し工夫して、若いチームである点を積極的にアピールすべきだったかもしれない。20代の若いチームが、逆に40代のおじさんチームと戦うとかね……。

 主人公側のチームは全部で5人になるのですが、それぞれのキャラクターの得意技が不明確なので、チームワークがうまくとれていない。例えば、金城武は侵入のエキスパート、キャッシュはコンピュータのエキスパートらしいのですが、ここにメカの天才であるタイタン、リーダー格のサマンサ、天才ハッカーのフェニックスがからんでくる。この時点で既に、コンピュータ関係がダブついているではないか。しかも実際の犯行計画になると、ハッカーだったはずのフェニックスが、ハングライダーで空を飛んでしまう。こりゃなんじゃい。タイタンがアル中で、フェニックスが聾唖という設定も、物語の中でほとんど生かされていない。これはもっといろいろいじれるはずだけどな。

 アクションシーンはかなりがんばった。ハイテク装備はまるで『バットマン』みたいだし、海外ロケまでしてスケールの大きいスタント場面を作っている。ただ、多分これは編集のテンポの問題だと思うのですが、アクションに小気味よさがあまりなく、どうにもモタモタして見えるのです。やってることはハリウッド映画と同じなんだけど、見せ方の技術がまだ追いついていない感じ。

(原題:神偸諜影/DOWNTOWN TORPEDOES)


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