ピンク・フラミンゴ
〈特別篇〉

1998/05/08 日本ヘラルド映画試写室
'72年にジョン・ウォーターズが撮ったカルト・ムービー。
体調整えて見ないと映画に負けるよ。by K. Hattori


 映画史上もっとも下品な映画として有名な、ジョン・ウォーターズ監督の出世作。「世界一お下劣な人間」として有名なディバインは、メリーランド州ボルチモアの郊外で、家族と一緒にトレーラーハウス暮らし。彼女の家族は、ベビーサークルの中で玉子ばかり食べている母=イーディ、ニワトリを使った変態セックスが得意な息子=クラッカー、他の家族に比べると一見普通そうだけど、じつはとんでもない性格の金髪娘=コットンの3人。ディバインは変態社交界での華やかな生活がもとで、お尋ね者になり、今はバブス・ジョンソンという偽名を使って暮らしている。しかしボルチモアには、自分たちこそ「世界一お下劣な人間」にふさわしいと考え、ディバインにライバル意識をむき出しにするマーブル夫妻が住んでいた。マーブル夫妻はディバインたちを挑発し、なんともお下劣な戦争の幕が切って落とされる。

 1972年製作の低予算映画ですが、どれだけ予算をかけようと、この映画と同等のパワーは作り出せないでしょう。この映画は、お話が面白いわけでもなければ、お芝居が面白いわけでもない。技術的にも拙い部分ばかりです。でも、観客はスクリーンに目が釘付け。この映画で何が面白いかというと、それは出演している役者たちが面白い。主人公ディバインの一家とその仲間たちは、まるきり本物の「変態さんたち」です。ディバインは体重150キロで、頭を半分剃った黄色のモヒカン刈り、身体にぴったりとまといつく真紅のドレスをまとい、顔はサーカスの道化師のようなメイクをしている。彼女は……、しかも男なんだよね。彼女は映画のラストで、犬のウンコをにこにこしながら食うという、ハリウッドのアカデミー女優が何万ドルを目の前に詰まれても絶対にやらないであろう「芝居」をやってのける。クラッカーの“チキン・セックス”も強烈。女性とセックスする時、自分と女性の身体の間に生きたニワトリを挟み、そこでバラバラに引きちぎるのです。この場面の凶暴さは、まさに「狂ってる」としか表現できない。

 ディバインの誕生パーティーに来た男が、「歌う肛門」という芸を披露する場面もすごい。一応ここは日本なので、映画にはボカシが入っているのですが、そのボカシ越しに、肛門がパクパク開いたり閉じたりする様子がしっかり見えている。普段は「映画にボカシなんてナンセンス!」と叫ぶ良識派の映画ファンの皆さんも、この場面は「日本にはボカシがあってよかったな」と安堵することでしょう。この映画では、男性の露出狂がイチモツをぶらぶらさせながら歩く場面や、手のひらに出した精液を注射器で吸って女性器に注入する場面など、ボカシなしにはあり得ない場面のオンパレード。当然、この映画はR-18なのでした。

 ちなみに『〈特別篇〉』はオリジナルの16ミリフィルムを、デジタルスキャンで35ミリにブローアップし、巻末にジョン・ウォーターズ自身による解説と、本編から割愛されていた未公開カットを付け加えてます。

(原題:Pink Flamingos)


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