JOKER
疫病神

1998/04/21 東映第2試写室
最後の池袋文芸坐跡での銃撃戦には映画ファン感激!
渡部篤郎と萩原健一主演のやくざ映画。by K. Hattori



 『スワロウテイル』や『愛する』で、好感の持てる芝居を見せていた若手俳優、渡部篤郎の最新作。今回は心臓に持病のある、池袋の下っ端やくざを好演している。主人公の恋人役には、『北京原人』でメジャーになったのが嬉しいんだか悲しいんだかわからない片岡玲子。主人公の幼なじみ役には、『岸和田少年愚連隊・血煙純情編』『CLOSING TIME』『蘇る金狼』などで強い印象を残す北村一輝(前は北村康という名前だったと思う)。主人公の所属する組織の野心家ナンバー2には、つい先日観た『安藤組外伝・群狼の系譜』でもやくざの幹部を演じていた萩原流行。そして、7年ぶりに池袋の街に帰ってくる男を、萩原健一が演じている。監督は『ご存知!ふんどし頭巾』の小松隆志。

 この映画の直前に、同じ東映の建物の中で新宿を舞台にした『不夜城』を観ていたのだが、映画としてはこの『JOKER/疫病神』の方がまとまりがあって面白かった。渡部篤郎のエピソードと萩原健一のエピソードがつながらず、最後の最後までヨリ縄が解けたままという致命的欠点を持つ映画だが、要所要所にそれを忘れさせる「熱さ」が感じられ、僕はそれに好感を持つ。主役二人のつながり以外にも、この映画はエピソードがばらばらに配置されて、どうにもまとまりの悪い部分が多いのだが、そうした技術的な点はともかくとして、観ていて楽しい場面が多いのが映画を救っている。

 主人公は心臓の血管に障害があり、走るなどの激しい運動をすると命にかかわるという男。でも彼はしばしば、そんな身体と自分の運命に挑戦するかのように走る。走り終わると自分の胸に手を当てて、「なんだ、生きてるじゃねえか」とつぶやくのです。いつも死の一歩手前に立っている男が、渡部篤郎扮する主人公なのです。自分の命と戯れることを日常としている彼は当然ニヒリストで、あまり喜怒哀楽の表情を見せず、つっぱって生きている。その彼の表情が、恋人や昔なじみの友人の前では少しほぐれる。その小さな変化がなかなかによろしい。

 ショーケンのエピソードは、ちょっと中途半端すぎるのではないだろうか。彼のエピソードと渡部篤郎のエピソードが映画を2分割してしまい、映画のボリューム感をなくしていると思う。原作がどうなっているのかは知らないが、ショーケンと渡部篤郎を序盤から中盤でもっとからませないと、終盤の共闘が唐突なものに思えてしまう。要するに、ふたりの物語をしっかり結びつけて、ヨリ縄にする工夫が必要だったと思うのだ。

 重い話になりそうな映画だが、北村一輝の不思議な魅力が加わることで、全体にふんわりと軽い味わいになっている。彼も決して、コメディリリーフというわけではないんだけど、彼の存在が物語全体をかきまぜて、映画全体がどんよりと停滞するのを防いでいるように思えた。片岡玲子は今回素直ないい女の子役で、どこかで彼女がはじけることを期待していた僕は、少し拍子抜けしたしたけど、たまにはこんな役もいいですね。


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