名探偵コナン
14番目の標的

1998/04/09 東宝第1試写室
途中に「未来少年コナン」みたいな場面もあって面白い。
本格推理としてはまずまずだが人間が弱い。by K. Hattori



 テレビでもアニメが放送されている、人気マンガ「名探偵コナン」の劇場第2弾。僕はテレビ版もコミック版も見ていないので、映画を観る前はそれがネックになるかと思いましたが、この映画は冒頭で物語の背景説明と小道具の解説を全部してくれたので、難なく物語の中に入って行くことができました。主人公の名は江戸川コナンで、これは江戸川乱歩とコナン・ドイルの名前をくっつけたものだそうで、方向性としては「本格推理」を目指しているようです。今回の映画も、推理ものとしてはそれなりに見応えがありました。ただ、本格推理という路線と、アニメの絵柄のギャップを感じますが……。

 中身は謎解きミステリーなので、ストーリーのポイントに立ち入った話は避けますが、ミステリー部分だけ取り出すと、テレビの2時間ワイドドラマと変わらないような気がしました。トランプの札の順番で人が殺されて行くというアイデアは、特にミステリーファンではない僕にも、クリスティの「ABC殺人事件」あたりからの発想だとわかったし、陸地から遠く離れた海中レストランに登場人物たちが全員閉じ込められるという設定は、同じクリスティの「そして誰もいなくなった」だと思う。ただし、これは物語のアウトラインであって、犯罪のトリックや謎解きのプロセスは、また別のものになっているようです。もっとも、ミステリーファンが見れば「これはあの小説のあのアイデアと同じ」という点がたくさんあるとは思いますが……。

 この手のミステリー映画ではある程度やむを得ないのかもしれませんが、僕は犯人の犯行動機にもう少し工夫の余地があってもよかったと思う。緻密な犯罪計画を練る男にしては、動機が弱すぎる。普通の人なら殺意にすら達しないようなささやかな出来事を、容易に殺意に結び付けてしまう強引さが残念だ。こうした自己中心的性格と短絡指向が、緻密な犯罪計画と結びつくのがわからない。たぶん現実には、入念な下準備や計画を練る犯罪者は、小心な人間なのです。小心だからこそ、犯罪が発覚するのが恐いし、自分が捕まるのが恐い。だからばれないように計画を練るのではないでしょうか。「世界は俺様のもの」と思っているような人物は、もっと大胆かつ無造作に犯罪を犯すものです。警察の捜査能力を馬鹿にしているし、何をやっても自分は捕まりっこないという、根拠のまったくない自信があるからね。

 中身は2時間ワイドドラマですが、これはアニメなので、最後はハリウッド映画並みの大スペクタクルを用意できるのです。ワイヤーが次々と引きちぎられ、ゆっくりと倒壊して行く建物の描写には迫力がありました。

 言い出せばキリがないほど小さな傷の目立つ映画ですが、全体の出来は決して悪くない映画です。観た人は誰しもそこそこは楽しめると思う。昨今人気のワインブームなども取り込んで、いかにも今風の物語になってます。僕はこうした時事性が映画製作には不可欠だと思っているので、今回の映画を観て大いに感心しました。


ホームページ
ホームページへ