友情
Friendship

1998/03/06 東映第1試写室
三船敏郎の愛娘・三船美佳の映画デビュー作。
白血病の少女の実話を描く。by K. Hattori



 昨年末亡くなった「世界のミフネ」こと三船敏郎の娘、三船美佳の映画デビュー作。白血病の女子中学生が、クラスメイトたちにはげまされながら精一杯生き、青春の炎を燃焼しつくすという、昔ながらの「難病物」だ。実話をもとにした映画だそうですが、試写室でもらった資料には「CNNニュースでも報道された実話」と書いてあるだけで、どこまでが実話で、どこからが脚色なのかの説明は一切なし。たとえ実話だとしても、そこから何を抽出し、何を付け加えたかが映画のオリジナルだし、脚本家の腕の見せ所だと思う。その点、今回もらった資料はちょっと不親切だったと思う。せめてモデルになった出来事がいつどこで起きたことなのかぐらいは、書いてくれてもよさそうなものだけどな。(プレス向けの資料にはこういう不親切が多いのだ。宣伝部などに問い合わせて、調べりゃわかるんだろうけど……。)

 監督は4月4日から同じ東映系で『大安に仏滅!?』も公開される和泉聖治。『友情(Friendship)』は東映洋画系で5月中旬公開とのことなので、2本が並ぶことはありませんが、和泉監督は最近東映での仕事が多いです。多作はいいことなので、このままコンスタントに作品を撮り続けてほしい。そうすれば中には『お日柄もよくご愁傷さま』のような傑作も生まれるでしょう。

 かつて骨肉腫と共に「難病映画」のチャンピオンだった白血病も、骨髄移植療法で治るようになってからは、すっかり地味な病気になってしまった。でも骨髄には適合性があって、親兄弟でも完全には適合しにくい。そんな場合は、いつ現われるかわからない提供者を待ち続けなければならないのです。発病するのが先か、提供者が現われるのが先かの追いかけっこ。『マイ・ルーム』のダイアン・キートンは提供者をずっと待ち続けていたし、『金色のクジラ』の幼い弟は幸い兄から骨髄の提供を受ける事ができた。『友情』の主人公あゆみは、骨髄提供者の出現をずっと待ち続けている立場です。

 骨髄移植ができないまま、科学療法の副作用で髪の毛がすっかり抜け落ちてしまったあゆみ。彼女は見舞いに来た級友たちにも、変わり果てた自分の姿を見せることができない。そんな彼女と一緒に夏休みを過ごそうとするクラスメイトたちは、彼女の負担を少しでも減らしたいという気持ちから、男の子も女の子も、全員がバリカンで頭を坊主に刈り上げてしまう。あゆみの前に坊主頭のクラスメイトたちがずらりと並ぶ場面は、この映画最大のクライマックスでしょう。

 しかし、この映画の弱さはじつはそこにある。劇中最大のクライマックスが、映画の中間地点で訪れるため、その後はさしたる山場もなく、ゆるやかな下り坂になるだけなのです。クラスメイトが丸刈りになるのは、宣伝写真などを見て観客も知っているから、それ自体に大きなインパクトはない。物語の終盤にも、大きな山をもうひとつ作るべきでした。最後のもうひと押しが足りなくて、ラストの大泣きを期待していたのに肩すかしです。


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