グッド・ウィル・ハンティング
旅立ち

1998/02/19 松竹第1試写室
孤独な天才少年と、彼の成長を見守るカウンセラーの交流。
アカデミー賞9部門ノミネートの話題作。by K. Hattori



 この映画に、主人公ウィル・ハンティングの恋人スカイラー役で出演しているミニー・ドライヴァーですが、僕はなぜ彼女がいつも大きな役で映画に出演できるのかが疑問だ。彼女は『スリーパーズ』ではブラピの恋人役、『シェフとギャルソン,リストランテの夜』ではスタンリー・トゥッチの恋人役、今回はマット・デイモンの恋人役。映画の中では常に“ヒロイン”と呼ばれる役どころを次々演じています。でも彼女って、はっきり言って美人じゃないでしょ。可愛くもない。新鮮さもなければ、若々しさも感じられない。なのになぜ、彼女はいつも売れっ子俳優の恋人役で映画に出られるのか? これは私的な「ハリウッド七不思議」の筆頭として、常に僕の頭の中にある疑問です。キャスティング・ディレクターやプロデューサーに、強力なコネでもあるのかな……。

 今回の映画も、ヒロインがドライヴァーであることで、ずいぶん損をしている点があると思う。マット・デイモンの繊細さに比べると、彼女はタフに見えすぎるのです。まぁ実際に彼女はタフなんだけど、その裏側には傷つきやすく繊細な「女の子」の部分も持っていなければならない。彼女は演技でそれを作り出そうと苦労していたけれど、ならば最初から「女の子」にこの役を演じさせればよかったではないか。ちなみにミニー・ドライヴァー嬢は今年公開予定の『フラッド』で、クリスチャン・スレーターと共演しているらしい。また恋人役か?

 僕としてはミニー・ドライヴァーの存在が気になりましたが、この映画は現在アカデミー賞9部門にノミネートされており、この春日本公開の作品中でも、1,2を争う話題作であることは間違いありません。(なんとミニー・ドライヴァーも助演女優賞候補!)先行しているゴールデングローブ賞では、既に脚本賞を受賞しています。アカデミー賞では『タイタニック』や『L.A.コンフィデンシャル』と並んで、賞取りレースの大本命です。日本での映画公開は、アカデミー賞の様子を見ながら公開時期が決定されるのではないでしょうか。

 天才的な頭脳を持ちながら、心に深い傷を持ち、防衛的に他人を傷つけてしまう青年ウィルと、彼を見守るカウンセラーの交流を描いた人間ドラマです。脚本は映画のオリジナルで、書いているのは主演のマット・デイモンと、友人役で出演しているベン・アフレックのふたり。カウンセラー、ショーン・マクガイア役のロビン・ウィリアムスが、今回はごく控えめな助演ぶりを見せ、映画を奥行きのあるものにしています。ウィルを発見する大学教授役、ステラン・スカルスゲールドも上手い。自分が発見した才能に驚くと同時に、抑え切れない嫉妬を燃やし、その反動でカウンセラーのショーンに当たり散らす場面では、この人物の複雑な心理を垣間見せてくれる。下手な役者が演じると偽善者ぽく見えるキャラクターでしょうが、スカルスゲールドは複雑な人物の内面をうまくこなして、自分の肉体で表現することに成功している。この人は『奇跡の海』に出てた俳優です。さすが!

(原題:GOOD WILL HUNTING)



ホームページ
ホームページへ