ウルトラマンティガ

ウルトラマンダイナ

1998/02/18 松竹第1試写室
テレビ番組の番外編なので大人は100%楽しめるかな……。
小中監督の映像センスは冴えてます。by K. Hattori



 映画版ウルトラマンは、前回まで『ウルトラマンゼアス』が2本作られていますが、今回は人気テレビ版「ウルトラマンティガ」「ウルトラマンダイナ」のヒーローふたりが共演する、劇場用新作映画になりました。僕は残念ながらテレビシリーズを見ていないのですが、テレビ版を見知っている子供たちには嬉しい映画になっているのではないでしょうか。監督は『ゼアス2』とテレビ版「ダイナ」の1・2話も撮っている小中和哉。この人の映像感覚は、ウルトラマンのような荒唐無稽な世界にこそぴったりとマッチします。

 同じ特撮映画でも、『ゴジラ』や『ガメラ』のようなリアル路線に流れず、ある程度抽象的・記号的な造形に徹している姿勢に、独自なものがあります。ミニチュアセットは一目でミニチュアとわかる作りですが、これをリアルに作ってしまうと、むしろウルトラマンの世界は壊れてしまうのではないでしょうか。ウルトラマン・シリーズも、僕がリアルタイムで見ていたような初期には、シリアスなテーマも扱っていたし、特撮もリアルなものを指向していたと思う。しかしどこからか、このシリーズはべたべたのリアリズムを捨てて、華麗なデジタル合成を見せ場とする「特撮もの」になった。僕はこれを、正しい方向だと思う。近代的なビルが立ち並ぶ現代の日本で、身長50メートルの超人と、それに匹敵する大きさの怪獣が毎週戦うという物語を、リアルに作るのはどう考えたって無理があるのです。

 初期のウルトラマン・シリーズが描いていた怪獣は、高度経済成長期に現われた、公害や差別などの社会的ひずみを象徴する存在として描かれていた。ちょうどゴジラが、原爆や冷戦時代を象徴していたようなものです。しかし社会が安定して、一定のバランスが生まれてしまうと、こうしたテーマは描きにくいのでしょう。テーマはより普遍的な、人間の心の中にあるものに向かう。

 今回の映画は、主人公が自分自身の中に芽生えた慢心を抑え、恐怖心をどう克服するかが大きなテーマになっています。仲間たちとの友情、自分を支えてくれる無数の人々への感謝、ひとつのことを信じることの大切さなど、中身はまるでスポーツ映画さながら。物語の展開もスポーツ映画をなぞるように進み、山あり谷ありの展開はパターン通りとも言えますが、安心して観ていられる内容に仕上がっている。

 今回の映画の見どころは、巨大なロボット戦艦プロメテウスの開発者キサラギ博士役で出演している、杉本彩の不思議な芝居。宇宙人に身体を乗っ取られているという設定なのですが、声に微妙なビブラートがかかっていて、いかにも人間離れしている感じがうまく出てます。これは機械的にあとから操作したのか、あるいは最初からそういう芝居なのか判然としませんが、面白い処理だと思います。テレビ番組の番外編的内容なので、子供を連れていったお父さんたちは、あまり楽しめないかもしれません。でもつまらない映画ではないですよ。


ホームページ
ホームページへ