シーズ・ソー・ラヴリー

1997/12/08 シネセゾン試写室
私生活でも夫婦のショーン・ペンとロビン・ライトが夫婦の愛情を熱演。
ニック・カサヴェテス監督が父ジョンに捧げた作品。by K. Hattori



 ジョン・カサヴェテスの残したシナリオを、息子ニック・カサヴェテスが映画化した作品。この脚本の映画化権を一時持っていたというショーン・ペンが、主人公エディを演じ、彼の妻役を私生活上のパートナーでもあるロビン・ライト・ペンが演じている。ジョン・カサヴェテス夫人であり、監督ニックの母親でもあるジーナ・ローランズが1シーンだけゲスト出演するなど、全体にアットホームな雰囲気の漂う映画。そして後半になって登場する大物俳優がジョン・トラボルタ。友人役にハリー・ディーン・スタントンとデビ・メイザーが出演するなど、渋いながらも芸達者な顔ぶれを揃えている。スタントンは『沈黙の断崖』にも出てました。メイザーはメジャーな女優ではありませんが、つい最近もスティーブ・ブシェミの監督デビュー作『トゥリーズ・ラウンジ』や『スペース・トラッカー』に出演しています。

 ショーン・ペンは『インディアン・ランナー』で監督宣言して、一時俳優業から遠ざかっていたことがありました。しかし映画監督としてのショーン・ペンは経済的成功とは無縁のようで、生活費と映画製作費を稼ぐために、今は俳優稼業と二足のわらじです。『カリートの道』『デッドマン・ウォーキング』などが印象に残りますが、本作『シーズ・ソー・ラヴリー』もそれに負けない彼の代表作となることでしょう。今回の映画では、愛妻ロビン・ライトと夫婦役を演じてます。ロビン・ライトは『トイズ』や『フォレスト・ガンプ/一期一会』で知られる女優ですが、こんなに演技がうまいとは思ってなかった。出演作は多いのに、日本にはあまり紹介されていない人です。個人的に注目しておこうと思ってます。

 荒れ果てた生活をしながらも深く愛し合うエディとモーリーンのカップル。しかしそんなささやかな幸福も、エディの狂気の発作が原因で破綻する。医者から「治療には3ヵ月かかるか3年かかるか……」と言われたモーリーンは、エディに「3ヵ月の辛抱よ」と告げて病院を去る。物語はそこから10年後にジャンプ。医者にエディは治らないと聞かされたモーリーンは、別の男と結婚し、10年前に妊娠中だったエディの子供も含め、3人の女の子の母親になっている。エディ退院の知らせを聞いて、家族を捨ててエディのもとに戻ろうとするモーリーン。後半はエディ、モーリーン、彼女の新しい夫ジョーイ(トラボルタ)、子供たちなどを交えて、家族の愛情と男女の愛の葛藤を描いて行きます。

 前半と後半で、画面の色調をガラリと変えてみせる撮影は見事。前半の画面は冷めた紅茶のような紫がかった茶色で統一され、後半は透明感のある色あざやかなトーンになる。モーリーンがエディとの生活に戻ると、街の風景がまた茶色になるところなどは見事です。撮影はリュック・ベッソンのカメラマンでもあるティエリー・アルボガスト。彼はこれでカンヌ映画祭の高等技術院賞を受賞しています。エディ役のショーン・ペンも主演男優賞をとっている。小さいながら見応えのある作品ですよ。


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