アリッサ・ミラノの
堕落の園

1997/11/19 KSS試写室
アリッサ・ミラノのお色気を期待すると大いに裏切られる、
二流のサスペンス・スリラー映画。by K. Hattori



 原題は『BELOW UTOPIA』で、直訳すると「下等な理想郷」といった意味だから、邦題の『堕落の園』というのも、訳としてはそう遠からずといったところか。原題が示しているのは、一見平和に見える裕福な家族の中にある、どす黒い人間の欲望や、目に見えない不信、離反、愛憎の葛藤などのことだろう。『堕落の園』というタイトルからは、そうしたイメージが消えている。ましてやタイトルの前に『アリッサ・ミラノの』という修飾がくっついているから、余計に話がややこしい。アリッサ・ミラノはシュワルツェネッガー主演のアクション映画『コマンドー』でデビューした、ロリータ系のアイドル女優でしたが、その後どうしていたんでしょうね。今回の映画では、すっかり成長して25歳。この映画の製作総指揮も兼ねるなど、邦題に恥じない活躍ぶり。

 配給会社の資料を見ると、日本ではこの映画を「アリッサ・ミラノのお色気がたっぷり楽しめる映画」というセンで売りたいらしいことがわかる。タイトルの『堕落の園』というのも、何やら淫らなものを感じさせます。資料を見ると、「炸裂する爆乳に視線が泳ぐ!」「かつてのロリ系アイドルからモード・チェンジし、弾けるハイパワーボディと爆乳に妖艶さを発散させ、圧倒的にイケてるオンナとして登場、そんなアリッサの新しい成熟した魅力が楽しめる」「アリッサは、カーセックスなどの堪能描写にも大胆露出で演じて、その挑発的で危険な肢体で“爆乳・巨乳・美乳アイドルマニア・キラー”ぶりを発揮する」と、すごく扇情的なのです。僕は本編を観るまで、ソフトポルノか何かだと思ってました。

 ところがそんな配給会社の思惑や観客の期待を、見事に裏切ってくれるのがこの映画です。アリッサ・ミラノの「爆乳」ってのは何なんだ? 乳首も見えてないんじゃないの? 確かにセックスシーンはあるけど、ぜんぜんエッチじゃないよこんなの。これならドリュー・バリモアが服着たまま歩き回っている方が、よっぽどセクシーだぜ。結局この映画って、中身は普通のサスペンス・スリラーなんだよね。映画の出来は中の下ってところで、特別ひどい映画ではない。まずまず楽しめます。でも、映画としてはもうひとつパンチ不足なんだ。そこで、配給会社が知恵を絞って「アリッサ・ミラノがお色気ムンムン! これだ!!」という路線をひいた。

 この映画の最大の欠点は、アリッサ・ミラノが脱がないことではなくて、犯罪の黒幕がすぐに観客にばれてしまうことだ。家族そろっての食事が終わり、ヒロインは恋人とふたりで地下室へ。ちょうどその時、武器を持った強盗が家に押し込んで、階上の部屋では一家が皆殺しになってしまう。この過程を、もっとショッキングに描ければ、映画の展開はもっとスムーズになったはず。物音で上の部屋の惨劇を想像させる場面だけど、制約が多い分、演出はもっともっと自由になるはずなんだ。ここでヒロインと恋人を震え上がらせ、観客をそれに共感させられなかったことが、この映画の致命傷になった。


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