コップランド

1997/11/13 松竹第1試写室
スタローンが「役者」であることを再確認させられる作品。
出演者がすごく豪華。それだけでも満足。by K. Hattori



 70年代にニューヨークの警官たちが大量に移り住んだ、ニュージャージーの小さな町ギャリソン。警官たちは都市の喧騒を離れた静けさと平和を町に求め、それが警官同士の結束と、独自のコミュニティーを作り出した。タイトルにある『コップランド』とは、文字どおり「警官の国」と化しているギャリソンの町を指している。ここでは国法や州法以前に、警官たちの作り出した秩序が最優先されている。警官にとって、この町は聖域。ここには「悪徳警官」などひとりもいない。個々の警官の失敗や犯罪は、この町の警官組織によってきれいに浄化される。他人から見れば、それは町ぐるみの犯罪容認であり、犯罪の揉み消しだが、コップランドの住人たちはそうは考えない。犯罪都市ニューヨークの治安維持のために身をすり減らし、ギャリソンの町を平和に保ってきたという誇りが、彼らのコミュニティを支えている。

 この映画の主人公は、そんなコップランドの中で働く保安官フレディ・ヘフリン。ニューヨークの警官たちは、ニュージャージーのギャリソンで、法的には何の権限も持っていない。表向き治安を守る役目は保安官たちのものだ。もちろん、犯罪が横行する地区に囲まれたこの町が、全米でも一二を争うほどの低犯罪発生率を維持しているのは、警官たちによる目に見えない自警組織が機能しているからなのだが、保安官であるフレディはそれを見て見ぬふり。警官たちがいるからこそ、たった3人の保安官で、町全体の治安を守ることだってできるのだ。かわりに、フレディは警官たちの不法に目をつぶり、警官コミュニティに一定の敬意を払っている。両者はいわば、持ちつ持たれつの関係なのだ。

 そんなコップランドに、警察の内務調査局が調査のメスを入れる。偶発的な不祥事事件を起こした若い警官マイケルをかくまった結果、それが大事件に発展してしまったのだ。その事件をきっかけに、コップランド成立にまつわる大きなスキャンダルも浮かび上がってくる。町の警官たちのリーダーであるレイ・ドンランは、内務調査官のモー・ティルデンの追求をかわすため、かくまっていたマイケルを密殺しようとする。身の危険を察知したマイケルは、保安官のフレディに助けを求める。こうしてフレディは、否応なしに事件の渦中に入って行く。

 主人公フレディを演じたシルベスター・スタローンが、警官に対して複雑な感情を持つ男を好演。対決するレイ役のハーヴェイ・カイテル、内務調査官役のロバート・デ・ニーロなどが動きまわる役なのに対し、主人公は最後の最後まで動こうとしない人物。それでいて周囲を威圧するような存在感を出すには、スタローンというキャスティングはぴったりです。この役が別の役者になると、映画自体がぐっと小さな作品になったことでしょう。中心にこれだけの人がいるから、脇にレイ・リオッタ、アナベラ・シオラ、ジャニーヌ・ギャラファロ、マイケル・ラパポートなど、生きのいい若手や中堅がいても、それが引き立ってくる。見応えのある映画です。


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