モスラ2
海底の大決戦

1997/11/12 東宝第1試写室
子供をだまして金を巻き上げることを目的とする、ひたすら商売に徹した映画。
こんな映画が日本映画の基盤を支えているのじゃ。by K. Hattori



 前作『モスラ/MOTHRA』を観ていないので、このシリーズのコンセプトがいまいち飲み込めていない部分もあるのですが、僕は今回観た『モスラ2/海底の大決戦』をまったく面白いと思えなかった。見え透いたストーリー展開、粗雑な物語の設定、子供を王様あつかいする卑屈な態度、完全な悪人の登場しない欺瞞、何がなんでも死人を出すまいとする人命至上主義。はっきり言って、これほどひどい映画もなかなかないと思う。大映の『ガメラ』シリーズがファンの大喝采で迎えられ、来年の夏にはアメリカ産『ゴジラ』も日本に上陸するというのに、怪獣映画の総本山東宝がこれではすごく心もとないと思う。でも、こんな映画でもちゃんと客が入ってしまうんだから、映画会社としては作るのを止めたくないし、止められないのでしょう。

 資料を見ると、前作は7週間の興行で11億5千万の配収を上げており、これは東宝の上半期の成績第3位なのです。ちなみに第1位は『ドラえもんのび太のねじ巻き都市冒険記』の20億、第2位は『学校の怪談3』の12億です。下半期は1位が『もののけ姫』で決まりですから、東宝としては怪獣やアニメなど子供向けの番組さえ押さえておけば安泰だという気分なのかもしれません。ちなみに東宝が満を持して放った自信作『誘拐』は、配収が3億5千万。まったく、泣けてくるよなぁ……。

 なお今年の上半期で配収が10億を超えた日本映画は、東宝の3本の他に、東映の『失楽園』と『エヴァンゲリオン』しかない。(以上の数字はすべて文化通信社調べ。)配収が1億円に達していない映画もたくさんあるし、1千万にさえ達していない映画がままあるのが日本映画の現状。改めて数字を見ると、やっぱりゾッとすることもありますよ。寒い。寒すぎる〜。

 で、『モスラ2/海底の大決戦』ですが、やっぱりこれは子供だまし以外のなにものでもないと思う。とにかく作りが粗雑です。素人の僕が観ても、「あそこをもう少しこうすれば2倍は面白くなる」と思える場面のオンパレード。仲の悪かった子供たちが事件を通して和解し、腹黒い大人は改心するという、冒険映画としては定石通りの筋立てで、これはこれで構わない。ただし定石を定石たらしめるには、それなりの布石というものが必要なのです。そうした基本中の基本を、どうしてこの映画はおろそかにしてしまうんでしょうか。マンネリでもワンパターンでも構わない。でも映画としての定法だけは守ってほしいのです。作り手の感性がそうした定法や定石を無視してしまうこともあるし、それによって素晴らしい映画ができることもあるけど、『モスラ2/海底の大決戦』は断じてそうしたタイプの映画ではない!

 子供向けの映画というのは、国際条約で禁じられている「対人地雷」と同じ思想でできているのです。できのいい映画で大人の観客をひとり引っ張るより、子供向け映画で保護者ごと引っ張った方がいいのは確かでしょう。でもそれが、保護者世代の邦画不信を生んでいるのです。


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