スペース・トラッカー

1997/09/29 KSS試写室
懐かしの「特撮映画」の匂いがプンプンするSFアクション。
ビジュアルには日本のアニメの影響が露骨。by K. Hattori



 安っぽい物語、安っぽい道具立て、安っぽい人物設定、安っぽい特撮、安っぽい活劇。とにかく全編が安っぽさに満ちたSFアクション映画だが、その中に手作りの楽しさがあって面白い。バカバカしい物語をそうと自覚した上できちんと作っている魅力。リュック・ベッソンの『フィフス・エレメント』を楽しめた人なら、この『スペース・トラッカー』も十分に楽しめるはず。むしろ徹底した確信犯と言う意味では、この『スペース・トラッカー』に軍配を上げてもいい。主演はデニス・ホッパーとスティーヴン・ドーフ。ホッパーが古風で純情で一本気な宇宙版トラック野郎に扮してヘンにはまっている。一方のドーフは最近本当に大物俳優と縁がある人で、『ブラッド&ワイン』のジャック・ニコルソン、『バッド・デイズ』のハーベイ・カイテルに続き、今度はデニス・ホッパーとの共演になりました。『スペース・トラッカー』では純情なボンボンを演じています。次に日本に来るのは、ウェズリー・スナイプスと共演した『ブレード』かな? ブレイク寸前の旬の役者です。

 『フィフス・エレメント』のビジュアルデザインのベースになっているのはフランスの漫画でしたが、『スペース・トラッカー』のビジュアルデザインの基調になっているのは日本のアニメです。映画の冒頭から登場するバイオ兵器のデザインは、もろに宮崎駿の『天空の城ラピュタ』じゃないか。格納庫の中で何10体ものロボットが宙づり状態で休眠している描写など、ほとんどパクリと言ってもいいでしょう。実際の戦闘場面になると、これが突然『プレデダー』になってしまうのはご愛敬。このバイオ兵器のデザインをしたのは、SEXYロボットで有名なイラストレーターの空山基、実際に制作したのはスクリーミング・マッド・ジョージです。ふたりとも日本人なんだよね。映画の中には宇宙海賊も出てきますが、船体の横に大きく描かれたドクロマークを見ると、これは『キャプテン・ハーロック』の影響であることが明白。宇宙船の内装デザインなども、日本のアニメや特撮物っぽいんだよなぁ……。

 CG全盛時代に、あえてアナログふうの特撮を使うところが懐かしくて嬉しい。CGの映像を見慣れて視神経が麻痺しかけてましたから、冒頭の特撮場面を見たときは、忘れていた「特撮映画」の感動がよみがえってくる感じがしました。ただし、今はこうしたアナログ特撮の方がお金がかかるのです。ミニチュア模型を使った特撮で観客を大いに喜ばせた冒頭の10数分が終わると、あとはあまり特撮での見せ場がないのは残念。(最後の最後に、デジタル合成を使ったとんでもない絵が見られます。これにはびっくりした。)

 物語は単純だし、登場人物も薄っぺら。それでもどこかに人をくったユーモアがあって、時々フフフと笑ってしまう。話そのものは「なんじゃこりゃ〜、くだらねえ」で終わってしまいそうですが、このバカバカしさを受け入れられる人にはぜひ観てもらいたい映画です。


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