世界中がアイ・ラヴ・ユー

1997/09/04 シネセゾン試写室
観れば観るほど奥行きの深さに感心する映画。すごく面白い。
ミュージカル場面もよく考えられてます。by K. Hattori



 完成披露試写でも観ているので、これが2度目。最初に観たときは、やはりストーリーを追ってしまうし、次々登場するミュージカル場面に目を奪われて、ろくろく内容全体を俯瞰することができなかった。今回改めてこの映画を観ると、各エピソードの役割などが明確に見えてきて、前回観た時とはまた違った感慨を持ちました。前はぼんやりと「楽しい映画だな」と思っただけですが、改めて観直して「これは傑作だ」と思うようになりました。映画の最後にウディ・アレンとゴールディ・ホーンが踊る場面の、何とも言えない切なさは胸に迫ります。互いの心に残る相手への愛情を確認した後、ふたりはまた元どおりの親友同士へと戻って行く……。ちょっとほろ苦いエンディングですが、このテイストはアレンの前作『誘惑のアフロディーテ』にも一脈通じるものです。

 いきなり映画のディテールの話になりますが、この映画で「ナタリー・ポートマンが歌っている」という記事が一部の映画雑誌などに載ってます。確かに歌っていることは歌っているんですが、期待すると失望しますから、ファンの方はご注意を。映画の後半で、ほんの1フレーズだけ歌声を披露しています。彼女につられるようにアラン・アルダが同じ歌を歌い、次いでエドワード・ノートンに引き継がれるという、すごく面白い場面なんですけどね……。(試写室でも皆笑ってました。)

 ここでポートマンらに歌われている「I'm Thru With Love」は、ベニスのホテルの場面でウディ・アレンが歌い、クライマックスのセーヌ河岸ではゴールディ・ホーンが歌う、この映画の基調になるテーマ曲です。決して明るくハッピーな曲ではないけれど、それを最後に「Everyone Says I Love You」で見事にひっくり返してハッピーな映画に仕上げるところが、ミュージカル映画の醍醐味なんです。僕は2度目に観て、この構成にノックアウトされてしまいました。素晴らしすぎる!

 ジュリア・ロバーツを巡る恋の駆け引きのエピソードなどもとても面白いのですが、このコミカルなエピソードは完全に付け足しのサイドストーリーであることが、映画の最後には明らかになります。要するにこの映画は、ウディ・アレンとゴールディ・ホーンの大人の恋のゆくえを描いた物語。ホーンの夫であるアラン・アルダが最初に指摘したように、問題は「彼がまだ彼女を愛している」ことなのです。未練がましいとか、女々しいとか言うなかれ。彼らは自分たちの気持ちが十分にわかった上で、これからもそれまで通りの生活をしてゆくのです。

 シリアスな場面からコミカルなドタバタまで、ウディ・アレンの才能がまんべんなく発揮された映画です。この映画で、ドリュー・バリモアと指輪のエピソードなど、徹底してドタバタに徹していてすごくおかしい。ティム・ロスの登場場面も爆笑。(両方ともバリモアを巡るエピソードだな……。)一方でイツァーク・パールマンに「Just You, Just Me」を演奏させるなどの高級嗜好も健在。好き、好き、大好き。劇場でも観るぞ!


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