危険な動物たち

1997/09/02 UIP試写室
小さな動物園が繰り広げる売り上げ拡大作戦を描くドタバタ。
辛辣なジョークやギャグが栄える大人の映画。by K. Hattori



 9年前に作られた『ワンダとダイヤと優しい奴ら』のスタッフとキャストが再結集し、動物園を舞台にハチャメチャの喜劇を繰り広げる。じつを言うと僕は前作を観ていないのでちょっと心配だったんですが、出演者たちは同じでも、映画としてはぜんぜん別の設定の物語になっているようですから、初めての人でも安心して観られます。資料によれば、前作と同じなのは製作のマイケル・シャンバーグの他、ケビン・クライン、ジェイミー・リー・カーティス、ジョン・クリース、マイケル・ペリンなどの出演者たち。ケビン・クラインがシリアスからコメディまで何でもこなせる俳優だとは知ってましたが、まさかこれほどイケテル芝居をするとは……。この映画ではひとり二役まで見せるサービスぶり。これが終盤の複線になったりしますから、抜け目ないです。

 多国籍企業に買収され、売り上げの20%アップという過酷なノルマを課せられた動物園の面々。新園長のロロ・リーは「動物園に必要なのは危険と暴力だ!」と新たなコンセプトをぶち上げ、獰猛で危険な猛獣から構成された動物園作りで、入園客のアップを目指す。これには対象外となった「危険でない動物たち」の飼育係が猛反発。あの手この手で園長に翻意をうながすのですが、看板作戦、捕獲作戦、針小棒大な説得工作など、その手練手管がひとつの見どころになってます。

 そこに後から乗り込んできた社長の御曹司は、ロロとはまったく別の方法で動物園の売り上げアップを目指す。それはインチキ臭い里親制度と、大胆な企業とのタイアップ作戦。動物園には原色の看板が林立し、横断幕がはためき、商店街のバーゲンセールさながらの様子になってしまう。(飼育係の新しい制服はかわいいけどね。エスター・ウィリアムズばりのアシカショーも最高!)

 中盤でここまで風呂敷を広げてしまって、その後うまく物語を収束できるのか心配になるほどでしたが、最後はあっと驚く方法で八方丸くおさめてしまう。この強引な力技にはびっくりしました。まさか、そんな、あんた、それはアリですか? きっとアリなんでしょう。僕は思わず笑ってしまいました。キツすぎる一発です。

 この映画は春頃に一般試写が行われていたんですが、その後上映予定が秋に延期。夏頃に問い合わせたら「劇場公開なしでビデオになるかも」と言われて心配してました。これは『スクリーム』と違って、単に内容面で心配があるということなんでしょうかね。ん〜、スターが出演してないし、笑いの質もハリウッド製の「健康だけが取り柄です」的なものではないので、客を選ぶかもしれません。ジョン・クリースやマイケル・ペリンなどの出演者でもわかるように、モンティ・パイソン系のちょっとひねった笑いなんですよね。(クリースはこの映画の共同製作と共同脚本も兼ねてます。)監督のロバート・ヤングもイギリス出身、後任監督のフレッド・スケピシはオーストラリア出身と、スタッフからして非ハリウッド色が強い。そんなところも要注目です。


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