スクリーム

1997/08/31 丸の内ルーブル
劇場に行くならパンフレットは絶対に買いだ。
これで映画が10倍は楽しめるぞ。by K. Hattori



 週刊アスキーに書く映画評のために、改めて観てきました。前回観たのは今年の5月の一般試写のみ。「すごく面白かった」という印象は残ってましたが、内容面では忘れている部分も多かった。個々のエピソードは憶えているんですが、順番を忘れてるから、全部忘れてしまったのと同じことです。新鮮な気持ちで楽しめました。

 今回劇場に行って驚いたのは、劇場が結構混んでいたこと。日曜日の夕方の回で、客席は8〜9割埋まってました。こんなことは、最近滅多にないことです。公開直前のPRやパブリシティも不足気味で、しかも3週間限定公開という恵まれない公開でしたが、これだけ客が入るとは予想外です。これならムーブオーバーするだろうと、雑誌に記事を書く人間としてはちょっと安心した次第。映画が始まると、客の反応もじつにいい。恐がらせる場面では劇場全体がビクンと震える感じがしますし、笑わせる場面では客席の方々からクスクスゲラゲラ笑い声が聞こえてきます。やっぱり映画は、映画館で大勢で観るに限りますね。この手の映画の場合はなお更です。

 劇場での収穫の二つ目は、情報がぎっしり詰まったパンフレットを入手できたこと。本当は配給会社にプレスシートをお願いしていたんですが、どうした手違いか入手できず、かわりに劇場でパンフレットを購入したらこれが大当たり。700円という値段は最近の割高なパンフレットに比べてもちょっと高めですが、それだけの価値はある。大ありです。監督と主要キャストのインタビューが充実しているのも嬉しいですが、特筆すべきは字幕から書き起こしたシナリオの完全収録。最後の種明かし部分は袋とじという凝った作りだが、それ以上にすごいのは、鷲巣義明氏による詳細な脚注の数々。

 この映画では随所に過去のホラー映画からの引用やパロディがあることは、その手の映画に特に詳しくなくてもすぐわかることですが、シナリオの脚注ではそれらの引用元を丹念に拾い集めて解説してくれています。また映画に登場する恐怖描写やショック描写についても、過去のホラー映画から原典を探してきて、それをどうアレンジしたのか教えてくれます。字幕では割愛された台詞のディテールまで踏み込んだ考察は見事。これだけで、ちょっとしたホラー映画の百科事典になってます。

 最初に観たときは、冒頭で殺される高校生がドリュー・バリモアだと気付かなかったという失態を犯しましたが、今回はこのエピソードの概略もわかっているし、演出術まで含めてたっぷりと観ることができました。結末がわかっていても、やっぱりそれなりに恐い場面に仕上がっているんだから、これは相当に恐い場面です。電話の使い方が素晴らしい。コードレス電話をこんなにうまく使った恐怖演出が、これまであったでしょうか。このエピソードについても、パンフレットのシナリオ注には詳細な解説がある。それによれば、オリジナルは『夕暮れにベルが鳴る』『ハロウィンII』『ミッドナイトクロス』だそうな。ホラーは1日にしてならず。文化です。


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