スウィンガーズ

1997/08/15 日本ヘラルド映画試写室
L.A.の最新ファッションでおしゃれに決めた青春映画。
ふられた男の切ない気持ちに大いに共感。by K. Hattori



 恋人に振られた男が、いかにしてそこから立ち直るかという話を縦糸にしながら、L.A.で流行るいまどきの若者風俗を横糸として織り込んだ、とってもかっこいい青春映画の快作。主人公マイクを演じたジョン・ファブローが、自らの体験をもとに脚本を書いた。作中に登場する主人公の友人たちは、ほとんどが実際にファブローの個人的な友人たち。自分と友人たちの話を、自分と友人たちを俳優に使って、自分たちで作るというアイデアは、ほとんど自主映画のノリです。これを商用映画に仕上げた根性は買いでしょう。脚本完成から映画化まで、4年かかったそうです。

 登場人物たちは、売れないコメディアン、売れない役者など、上にあがろうとしてもがいている連中ばかり。映画は彼らの仕事場風景をバッサリとカットし、仕事を離れたオフの時間の彼らを追いかけて行く。コメディアン志望のマイクのジョークがことごとく空振りに終わるなど、彼らの前途多難ぶりを象徴的に描いたエピソードがてんこ盛り。それでもめげずにポジティブに生きている彼らに、僕は好感を持ってしまうんです。主人公たちのファッションや、夜な夜なラウンジ・クラブをハシゴしてパーティーに明け暮れる様子など、最新風俗面から「おしゃれな映画」という取り上げ方がされやすい映画だと思いますが、中身は結構古風なテーマです。

 女の人が男に振られてメソメソする場面は映画の中でよく見かけますが、男がメソメソする映画は数からいえば少ない方でしょう。失恋の辛さは男も女も関係ないんだから、今までこうした映画がなかった方がおかしいのかもしれないけど……。「別れた彼女から電話が来ない」と言って、日夜留守電のチェックに余念がない主人公を僕は笑えません。僕も同じようなことをしていた頃がありますからね。失恋の痛みを反芻しては涙ぐんでる主人公を、友人が訪ねてはげます場面があります。「失恋の痛みはいずれ癒える。俺もそうだった。だがそうなると、痛みが懐かしくなる。失恋の痛みが、俺の心の一部になってたんだ」。そう言って、主人公をはげましに来たはずの友人が、逆に涙ぐんだりする。僕はこの場面がちょっと素敵だと思いました。僕にも「失恋の痛みを懐かしむ」ようなところが少しはあるんです。

 主人公の友人トレントを演じたビンス・ボーンが、この映画の中ではもっとも美味しいところをかっさらってます。彼はスピルバーグの『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』にも、カメラマンの役で出演してました。『ロスト・ワールド』は監督のドラマ演出が完全に手抜きで、ビンス・ボーンも「見かけない顔だな」程度の認識しかされなかったと思います。その点『スウィンガーズ』はどのキャラも人間的魅力たっぷりに描かれたドラマで、ビンス・ボーンの役者としての幅や力量も、この映画ではじめて「なるほど」と思えるものになってます。ハンサムだし色気もある俳優なので、今後はいろんな映画でひっぱりだこになることでしょう。


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