秘密の子供

1997/08/06 東和映画試写室
監督フィリップ・ガレルが、自分とニコの恋と破局を描いた映画。
すいません。途中で寝てしまいました。by K. Hattori



 先日試写で観たドキュメンタリー映画『ニコ・イコン』で、フィリップ・ガレルと同棲していた歌手ニコについての予備知識が少しはあったので、面白く観ることができた。この映画はガレルがニコとの同棲生活と破局をモデルに描いた作品。この映画を観ると、『ニコ・イコン』の取材にガレルが応えなかった理由がよくわかる。『秘密の子供』を撮ったことで、彼の中で、自分とニコとの関係が完全に終わってしまったことを確認したんじゃないだろうか。ガレルはニコとの関係の一部始終を、この映画の中ですべて語ってしまったのでしょう。

 この日は体調が悪かったせいか、試写の最中に少し眠ってしまいました。刺激の少ないモノクロの画面。しかもそれが時折チラチラと微妙に揺れる。大きな起伏のない芝居がゆったりと演じられ、登場人物たちは抑えた口調でボソボソとしゃべる。カメラは基本的にすべて固定で、構図は安定しきっている。ひとつひとつのショットは、オシャレなポストカードのように美しい。でも寝てしまった。これはひとえに、僕の体調の問題です。この手の映画を観るときは、かなり頭が冴えて元気なときでないとまずいな。今まで試写室で眠くなったことは何度もありましたが、寝てしまったのは初めてなので……。

 眠くなったとき、それから逃れるにはどうすればいいんでしょう。軽く手足を動かす。伸びをする。あくびをしてみる。深呼吸する。首を動かす。目をしばたく。手や頭にあるツボを刺激する。カフェインの錠剤を飲む。いろいろ試したんですが、一番効くのはカフェインです。でも、この日のように本格的に調子が悪い日は、それでもほとんど効果がありません。僕はこの日カフェインの錠剤を2錠飲みましたが、眠気は止まらなかった。誰かいい方法があったら教えてください。

 全体の3分の2ぐらいは観ているのですが、その範囲に関していえば、すごく面白かったです。『ニコ・イコン』を観ていたので、各エピソードを観ながら、そこに描かれていない裏まで読めてしまう。ヒロインの子供が有名俳優の息子だという台詞も、台詞に出てこない「アラン・ドロン」という固有名詞まで思い浮かべることができるし、彼の母親に子供を預けているという台詞を聞けば、ドロンの母親の顔も思い浮かぶ。『秘密の子供』と『ニコ・イコン』は互いに補完し合いながら、ガレルとニコの物語を立体的に浮かび上がらせてきます。

 この映画は紛れもなくニコとガレルの物語なのですが、あまりそれに限定してしまうと、この映画の生み出した素晴らしい場面を見逃してしまう。(僕は眠ってしまったので、それ以前にかなり見逃しているけど。)最後に用意されている、カフェの場面はすごかった。席を立つエリーを目で追うこともしないバチスト。エリーが通りに出て何をしているかが、カフェのガラスにしっかりと映り込む。バチストはそれに無関心なまま、それでもエリーを待つ。エリーのした行為を非難がましい目で見る。ふたりの心のすれ違いを描いた名場面です。


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