プレッシャー
壊れた男

1997/08/04 GAGA試写室
『フォーリング・ダウン』+『不法侵入』÷2。新鮮味はない。
狂暴なチャーリー・シーンに同情した。by K. Hattori



 GAGAからの案内やプレス資料を見ると『UNDER PRESSURE(原題)』と書いてある映画ですが、本編巻頭のタイトルは『Bad Day On the Block』になっている。どう考えても、これが「原題」だと思うんだけど……。GAGAが買い付けを決めた後で、急遽タイトルが変更になったのかなぁ。ちなみにこの映画、僕が観た段階では、まだ日本国内での上映タイトルも決まってませんでした。10月公開ですから、間もなく正式にタイトルが決まって発表になるでしょう。(結局『プレッシャー/壊れた男』になった。)

 勇敢な消防士チャーリー・シーンが、女房子供に逃げられたショックと、連日続く猛暑のダブルパンチで錯乱し、隣の一家に殺意を向けるという物語。家庭崩壊の上、あまりの暑さでアタマのネジがふっとぶという設定はどこかで見覚えがあると思っていたら、チャーリー・シーンが一家で撮影したビデオを見て涙ぐんでいるところで思い出した。この設定は『フォーリング・ダウン』のマイケル・ダグラスからのイタダキですね。と言っても、この映画のシーンは、真夏のロサンゼルスを徒歩横断するわけではない。隣家の悪戯盛りの子供に腹を立てて、隣家にずかずかと乗り込み教育論をぶちかますわけです。やがてそれがエスカレートして、殺意に変わって行く。このあたりは『不法侵入』のレイ・リオッタの要素が、かなり入っていると思いました。

 この映画の欠点は、チャーリー・シーンの狂気に怯える隣家の主婦が、マデリーン・ストウではなく、メア・ウィニンガムだという点。その夫がカート・ラッセルではなく、デビッド・アンドリュースだという点。はっきり言って、この一家にはほとんど魅力がない。僕自身、うだるような暑い夏の日差しをくぐって試写室に入っていたので、「暑くてイライラするんだよ〜、畜生め!」というシーンの気持ちに同情してしまい、ウィニンガムをとっとと片付けてほしい気分になってしまった。あのお行儀の悪い子供たちには、きっちりとお仕置きせねばなるまい。子供を甘やかしてるんじゃねぇよ。……と、やや過激になってしまいそうな天気でした。

 隣家の狂人から理不尽な被害を受ける恐怖を描くのであれば、被害者たちには何の落ち度もない無垢な状態であることが求められる。ところが、ここに登場する被害者一家はそうじゃないんだよね。父親はクルマで道をふさいで「公道なんだから俺の勝手だ」と平然としているし、子供たちはギャーギャーうるさいし、ラジコンで窓ガラス叩き割っても「弁償するから文句ないでしょ」と一切の謝罪はないし、「今日中にガラス屋を呼ぶ」と言ってその気配はないし、子供が「僕のせいだ」と言うと「お前はちっとも悪くない」と甘やかすし、挙げ句の果てに警察を呼んで「逮捕の瞬間を見たい」なんてのこのこ隣家をのぞきに行くんだから、これはもう、ひどい目にあって当然の方々ですね。気の毒なのはパトロールしていた警官たちぐらい。ウィニンガム一家にも冷蔵庫の修理人にも、ほとんど同情できませんでした。


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