バウンド

1997/07/05 シャンテ・シネ1
2回ある銃撃シーンと後半のハラハラドキドキだけでも観る価値あり。
全編瑞々しい魅力にあふれたサスペンス映画。by K. Hattori



 今回「初日鑑賞オフ」を企画したこともあって、試写に続いて2度目の鑑賞となりました。この日の3回目、5時10分からの回を観たのですが、映画館はほぼ満席。正直言って、これだけのお客さんが入る映画だとは思っていなかったのですが、配給宣伝会社の地道な宣伝パブリシティ活動が実を結んだというところでしょうか。シャンテ・シネ1で階段に並んだ経験というのは、初めてか、もしくはすごく久しぶりだと思います。当日ロビーでは配給会社と宣伝会社の担当者が会場の様子を見ていましたが、ぎっしりと埋まったお客さんを観てほっと一安心といった様子。観ればこの映画の面白さは誰にでもわかると思うのですが、とりあえず客が入らないとどうしようもないですからね。配給のK2は同じシャンテで『妻の恋人、夫の愛人』も上映中。そちらもまずまずの入りだとのことで、とりあえずおめでとうございます。

 『バウンド』は先物買い指向の映画ファンが、今年必ずチェックしなければならない作品のひとつです。僕は去年『ユージュアル・サスペクツ』を観るタイミングを逸し、『トレインスポッティング』も遅くに観たので、その分を『バウンド』で一気に取り戻した気分。タランティーノの『レザボア・ドッグス』をビデオでしか見ていない人が後から悔しがるように、この『バウンド』を今回の上映で観逃した人は、きっと何年か後に「あの時観ておけばよかった」と後悔するでしょう。

 監督のウォシャウスキー兄弟は既に最新作の製作準備に入っており、これは大規模な予算をかけたSF映画になるとの噂。今回は独立系の低予算映画でしたが、次回はワーナーが世界配給するというから、これはずいぶんな出世です。この兄弟、まだ30歳そこそこなんだよね。才能に驚くと同時に、こうした形で才能を証明しさえすれば、そこに大きなお金を投資する人たちがいるアメリカという国がうらやましい。

 サスペンス映画はどうしても最初に筋を追いかけてしまうので、最初は映画の細部を見落としてしまう。今回改めて観て驚いたのは、細部にまで徹底してこだわったセットデザインやカメラワークの妙味。どの画面にも色気があります。観ている者が舌なめずりし、生唾を飲み込み、思わずニヤリとさせられるような凝った構図。シーンとシーンのつなぎも、アクロバティックなウルトラCを見せてくれる。主人公たちの部屋を、便器のクローズアップでつなぐ場面なんて、今回2度目に観てもやはりぞくぞくするもんね。金を盗む計画を練る場面が、いつの間にか回想シーンに入れ替わる場面も素晴らしい。

 主人公たちが恋に落ち、しっかりと結びついて行く過程なども、意外にていねいに描かれている。一度仲違いしてから仲直りさせるなんて、うまいじゃないですか。コーキーの純な気持ちに、ヴァイオレットがどこで応えるかというハラハラどきどきが最後まで持続して、最後の一瞬まで気が抜けない。物語が見事に着地してエンドタイトルが流れると、やはり「やられた」と思います。


ホームページ
ホームページへ