アナコンダ

1997/06/25 ソニーピクチャーズ試写室
乗り物パニック映画に続けとばかり帰ってきた動物パニック映画。
CGでリアルに描かれた大蛇が大暴れ! by K. Hattori



 『ロスト・ワールド』を観てしまった後で、この映画をどう評価しろと言うのだろうか。アマゾン奥地に「霧の民」と呼ばれる謎のインディオ集落を探しに行った学者とドキュメンタリー撮影隊が、途中で出会ったハンターと一緒になって、いつの間にか大蛇狩りに精を出す話です。出演者の中では、文化人類学者を演じたエリック・ストルツが一番名の知れた人だと思うのですが、途中で事故(事件?)に遭って物語の影に引っ込みます。残ったのは、ジェニファー・ロペス、アイス・キューブ、ジョナサン・ハイドといった小者連中と、ハンター役のジョン・ヴォイトぐらい。ヴォイトが不適な面構えでなかなか楽しませてくれるんだけど、それ以外はお話になりませんよ。そこでCG製の大蛇の登場になるんですが、これがまるっきりマンガなんだよね。

 昔の映画で大蛇というと、大きなぬいぐるみと格闘する俳優が、自分でくるくる回りながらぬいぐるみを体に巻きつけて行くものと相場が決まってました。今回CGになっても、やっぱりやっていることはこの「自らくるくる回ってヘビに巻かれる」方式と変わらない。確かにCGでしか描けない場面などもあって、そこはなるほどと感心する出来栄えなのですが、クローズアップで登場するヘビの体はCGじゃなくて最新のアニマトロニクス。呼び名は違えど、精巧なぬいぐるみみたいなものです。やってること自体は、『エド・ウッド』に出てきた「タコと格闘するベラ・ルゴシ」から進化してないのだ。

 ジョン・ヴォイト演じるハンターの行動パターンを見ていると、これがスピルバーグの『ジョーズ』にかなり影響されていることがわかります。ポール・サローンは、『ジョーズ』におけるロバート・ショーと同じ役回り。文明人の中にひとり混じった野生児が、周りの人間を徐々に支配していくが、最後は狂暴な野生の前に屈服する。今回は巨大なリールで大蛇を釣り上げようとする場面なんて、もろに『ジョーズ』だもんな。外部と連絡がつかなくなるように、無線機を壊す場面などもありました。どうせなら完全に『ジョーズ』のパターンを踏襲して、最後はハンターと撮影隊が協力しながら大蛇を倒すような展開にすれば面白かったかも。しかし、当のスピルバーグも『ロスト・ワールド』で原点の『ジョーズ』に戻っていたし、やはりあの映画は偉大だな。

 監督のルイス・ロッサはトム・ベレンジャー主演の傭兵アクション『山猫は眠らない』で、ライフル弾の主観ショットというとんでもない映像を見せてくれた人。今回も大蛇の視点での映像がたくさん登場しますが、最後の方にあっと驚くとんでもないショットが登場して大笑いさせてくれました。

 それにしても、ヘビもここまで大きくなると何となくファンタジックですなぁ。日本では大蛇のことを「うわばみ」と言いまして、恐怖の対象であると同時に、なんとなくコミカルな存在なんだよね。僕もこの映画を見ていて、どこかで落語みたいな受け止め方をしてました。


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