ダブルチーム

1997/06/24 ヤマハホール(試写会)
なぜか香港映画の監督が好きなジャン=クロード・ヴァン・ダム。
最新作では香港のスピルバーグ、ツイ・ハークと組む。by K. Hattori



 「香港のスピルバーグ」ことツイ・ハーク監督が、ハリウッドに進出してヴァン・ダム主演映画を作った。ヴァン・ダムはこれまでにも『ハード・ターゲット』でジョン・ウーと組み、『マキシマム・リスク』ではリンゴ・ラムと組んで映画を作っている。ツイ・ハークは香港映画人が次々と去った後も香港に残って、映画をプロデュースしたり、自身でも『金玉満堂/決戦!炎の料理人』などの楽しい映画を作っていた人。僕は彼の作る活劇が好きだったので、「ああ、あんたもハリウッドに行ってしまうのね……」という気分です。

 才能のある人がより恵まれた環境を求めてハリウッドに移るのは無理のない話だし、それによってツイ・ハークが本当に自分のやりたいように面白い映画が作れるなら、それは映画ファンとしてむしろ歓迎したい事態です。でも今回『ダブルチーム』を観た限りでは、なんだか普通のB級アクション映画という感じの仕上がり。香港テイストを感じさせたのは、ヴァン・ダムがスキンヘッドの東洋人殺し屋と戦う場面と、クライマックスの競技場の場面ぐらい。冒頭のカーチェイスなどは、ハリウッドにもっと上手い監督がいくらでもいますからね。

 今回ツイ・ハークは香港から撮影監督のピーター・パウ、武闘アクション監督のサモ・ハン・キンポーとジャン・シンシンを連れて行っているのですが、なれない仕事場では本当の実力が発揮できなかったように感じます。今回の映画は脚本やプロダクションデザインがハリウッドの人たちだし、アクション場面にしてもチャールズ・ピザーニというハリウッドのスタッフがスタント・コーディネーター兼アクション・シークェンス・デザイナーとして名を連ねてます。こうしたハリウッド流の映画作りの中で、ツイ・ハークの持っている原色の魅力が脱色されてしまったんじゃないでしょうかね。アクション映画って、やっぱり段取りが大事ですし……。

 アクション部分の甘さには同情的な僕ですが、芝居がわかりにくくなっているのには同情できない。これは脚本が悪いのかもしれないけど、敵役のスダブロスが主人公を執拗に狙うのが、息子の命を奪われた敵討ちだというところが明確になっていない。これは序盤にある遊園地の場面が、あまりうまくできてないから起こること。このあたりは中盤以降のドラマのとっかかりになる部分なんだから、娯楽映画だったらくどいぐらいに説明しておかなくてはいけない。スダブロスは自分の息子を奪われた怨みを晴らすために、主人公の妻と子供を殺そうとしている。その怨念を内に秘めた男が、そうと知らない主人公の妻に巧妙に近づいてくるというサスペンスが、まり活きてこなかったのはすごく残念です。

 ミッキー・ロークが悪役スタブロスを演じているのですが、以外にはまってました。最後の格闘シーンもそれなりに見られます。さすが元ボクサー。主人公の相棒を演じたデニス・ロッドマンは『エディー/勝利の天使』にも出てましたが、こっちの方がずっといいです。


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