デイライト

1996/12/12 東條会館
(ビッグコミック・スピリッツ特別試写会)
どこに連れて行かれるのかとっても不安になる物語の展開。
スタローン主演の大味な大災害パニック映画。by K. Hattori



 映画秘宝の「底抜け超大作」を読んだ印象覚めやらぬ時期にこの映画の登場です。なんというタイミングの良さ! これって『ポセイドン・アドベンチャー』のトンネル版そのもの。かつて大流行した大災害パニック映画のリメイク企画なんです。

 ニューヨークとニュージャージーを結ぶ海底トンネル内で爆発事故が発生。生き埋めにされた生存者たちを救出するため、シルベスター・スタローン演ずる元救急隊員がトンネルに単独潜入して大活躍する物語です。

 映画の序盤で登場人物たちを一通り紹介した後、トンネル内でのカーチェイス。そして起こる大爆発と火災はすごい迫力で、この映画一番の見所。「密閉したトンネルの中で薬物が爆発したら、一瞬にして酸欠になるんじゃないの?」とか、「炎が広がって行くのに、なんであんなに時間がかかるの?」などと問うのは禁物です。

 この後スタローンは唯一残った進入口である換気口を通って、トンネルの内部に潜入します。このくだりは映画の中で一番ハラハラドキドキする場面。どうせ中に入れるとわかっているのに、換気扇を止められる時間が限られているという設定をでっち上げたり、あるはずのないタイマーを作っちゃったり、あの手この手で楽しませてくれます。巧いんだよね。

 全体にすごく大味な印象の映画なんだけど、その最大の理由は、主人公スタローンの生存者救出プランが明確でないこと。どこから救出しようという計画もないまま、とりあえずトンネルに入ってしまったなんてことあり得るか? それじゃ「閉じ込められた生存者」が1名増えただけじゃないか。これは最初に「生存者を横道に誘導して助け出す」というプランを用意しておいて、その上で計画が挫折せざるをえない状況を作り、主人公たちを追い込んでゆくのが定石でしょう。場当たり的に行動して、その先に「出口がありました」では納得できないぞ。

 この手の救出劇で、やってはならないルール違反もいくつか見受けられる。最大のヘマは、皆で力を合わせて助け出した警官を、スタローンが置き去りにしてしまうこと。彼だけは助けなきゃ、あそこで力を合わせて助け出した時の感動は嘘になっちゃうじゃないか。この後、潜水場面で老婦人が死ぬ場面は、露骨に『ポセイドン・アドベンチャー』からの引用なんだけど、ただばあさんが死ぬだけで感動できるか? ましてやこの後、死んだはずの犬が再登場した時は唖然としたぞ。あのばあさんは随分と心残りな死に方をしたなぁ。「息子も犬も戻ってこないのだ」と宣言したじいさんの面目丸つぶれ。

 芝居は見ていられないけど、装置や特殊効果については一言も二言も言わずにおれない立派なもの。爆発シーン以外にも、突然道路が陥没して警官が車の下敷きになる場面などは遊園地のアトラクションのような面白さがあります。そう、これはユニバーサルスタジオの見学コースに新たなアトラクションを作るために計画された、完全な見世物映画なのです。


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