バーチュオシティ

1996/06/23 松竹セントラル1
安っぽいCG画像の中でデンゼル・ワシントンとラッセル・クロウが戦う。
この安っぽさにはそれなりに味があったりする。by K. Hattori


 俳優が豪華になっただけで、やっていることは『バーチャル・ウォーズ』と同じ。監督が同じブレット・レオナードだからしょうがないのかなぁ。ちなみにこの監督って、ジェフ・ゴールドブラム主演の『ハイダウェイ』も撮っている人ですね。どうせならそちらも観ておけばよかった。そうすればこの監督のタッチがもっと詳しく分析できたのに。残念。

 警察官の訓練用に開発されたバーチャルリアリティ装置。犯人のシド6.7は訓練用に開発された特殊な人格を持つキャラクターで、彼の中には歴史上に現れた2百人近い以上犯罪者のデータがインプットされている。訓練生はバーチャルリアリティという本来は「安全」な空間でこの強敵と戦うわけだけど、装置自体がまだ試作段階ということもあって、脳に過度な負荷がかかり被験者が死亡するなどの事故もしばしば。そんなわけで、実験には囚人が使われている。主人公のデンゼル・ワシントンは元警察官だけど、今は囚人としてこの実験に参加しているわけ。

 レオナード監督の前作『バーチャル・ウォーズ』は人間がバーチャルリアリティの世界の住人になる話でしたが、この映画は正反対に、バーチャルリアリティの中のキャラクターが現実世界に飛び出す話。デジタル情報の集積でしかないシドを、いかにして現実のものにするかというあたりはアイディア賞。現実には実現不可能そうなアイディアだけど、それを確信持って映像にしてしまうと、それは映画の中では現実になるんだよね。

 現実世界に現れたシドが、いきなりチャールズ・マンソンの手法で殺人をしたときは、この映画がデジタル版『コピーキャット』になるのかと思ってワクワクしました。ところが主人公のワシントンが追跡を始めると、彼と旧知の間柄であるグライムズという人格が表面に出るだけで、あとはダンマリ。つまらないぞ。要するにこれは、毛色の変わった復讐譚なんだよね。

 主演がデンゼル・ワシントン、共演がケリー・リンチ、シド6.7役に『クイック&デッド』のラッセル・クロウなど配役は豪華だし、ビルの屋上での追跡劇にはヘリコプターまで登場するなど撮影も比較的大掛かり。でも話事体が小さいし、中身がスカスカなんだよね。話の運びがいちいちツボから外れていて、噛み合わない部分も見えるしなぁ。そもそも主人公を囚人にする理由って薄いよ。この辺りは例えばカーペンターの『ニューヨーク1997』のスマートさに比べると、どうもモタモタして見える。ケリー・リンチも、一体何のために主人公にくっついて回るのかよくわかんない。彼女は画面に花をそえる役しか果たしていないんだけど、花なら花で、もっと若くてピチピチした女の子を出せと僕は言いたい。全体に安っぽい雰囲気の映画でした。


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