12モンキーズ

1996/06/22 よみうりホール(試写会)
『未来世紀ブラジル』と同じテリー・ギリアムの暗い面が出た映画。
この映画のユーモアには笑えなかった。by K. Hattori


 直前に『フィッシャー・キング』を観ていて、リディア役のアマンダ・プラマーが父親そっくりだということに気がついたばかりだったので、この映画に件のクリストファー・プラマーが出演しているのにびっくり仰天。重要な役ではありますが、『フィッシャー・キング』に出演していた娘ほどは活躍しないのが残念。テリー・ギリアムはミュージカルが好きに違いない、というのは僕が『フィッシャー・キング』を観て勝手に考えた想像だけど、クリストファー・プラマーと言えば『サウンド・オブ・ミュージック』のトラップ大佐ですなぁ。ふーむ。

 映画の方は期待が大きかったわりには、僕の膨らみきった期待にこたえてくれるものではなかった。謎のウィルスによる人類絶滅という大きなテーマを持って来たくせに、中身はヒーローとヒロインの恋愛ドラマ部分だけが目立ち、やけに小さくまとまってしまった。ストーリーは単純で古典的なタイムトラベルもので、時間の流れが一部でループするという使い古された表現も出てくる。

 主人公を未来人であるブルース・ウィリスに設定してしまったことで、結末はこの語り口と結末は回避できないものになってしまったのだと思う。この話は女医であるマデリーン・ストウを主人公にして、彼女が受け持った患者が果たして未来人なのか、それとも単なる狂人なのかというミステリーにする方が、話に力強さが出たと思う。そうすれば、始めはただの妄想だと思って聞き流していた人類滅亡の物語が、どうやら動かしがたい事実だとわかったときの彼女の恐慌状態を、もっと効果的に描けたんじゃないだろうか。今の構成だと、人類滅亡という未来を映画の観客は最初から知っているから、あまり驚きはないんだよね。むしろようやく主人公の話が通じたかと思って少しホッとしてしまうから、ここで話に弾みがつかない。(女性と未来から来た男の恋物語なんて、なんだか大人版『時をかける少女』みたいになってしまうけどね。)

 ブラッド・ピットが主人公の精神病院仲間という役所で登場するんだけど、何かとぶち切れた役を好んで演じてきたピットがここに来て一気に開花したという感じの怪演。話しているうちにテンションが上がってきてどんどんイカレてくる演技が、この人の場合芝居にみえないなぁ。ちなみに精神病院の描写はひどくグロテクスで、『フィッシャー・キング』でパリーが入院していた病院とは大違いでした。

 映画の最後にサッチモの曲が使われているけど、この手法ってテリー・ギリアムの十八番ですね。でも今回は『未来世紀ブラジル』の「ブラジル」や、『フィッシャー・キング』の「ハウ・アバウト・ユー」ほど効果的に使われているとは思えませんでした。ちょっと全体に物足りなかったです。


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