岸和田少年愚連隊

1996/03/20 松竹セントラル2
どう見たって中学生や高校生に見えない登場人物たちが繰り広げる、
喧嘩と岸和田弁にまみれた痛快な日々。by K. Hattori


 喧嘩に明け暮れる少年達の日常を、中学校から高校にかけてスケッチした映画。特に物語というものはないが、ゆっくりと確実に過ぎて行く時間の流れの中で、学習することなくただがむしゃらに生きている青春像が生き生きと描かれているのは気持ちいい。主人公は人気お笑いコンビ「ナインティナイン」の二人だそうだが、僕はテレビをほとんど見ない現代の変人なので、彼らの顔にはあまりなじみがなかった。どっちにしろ、この歳で中学生の役をやるとはなかなかいい根性だ。まぁ、最初からぜんぜんそれが気にならないのはすごいけどね。

 映画の中心になるのは原作者自身の少年時代の姿でもあるチュンバなのだろうが、演ずる矢部浩之のふてくされた表情はあまり輝いていない。彼は大暴れする友人達と共に自分も大暴れしながら、どこかで少し醒めた目をしている。(きっと原作者もこうやってどっかで醒めていたんだろうな。でなきゃ、それを後から文章になんてできないだろう。)むしろこの映画の中で光っているのは、相棒小鉄を演ずる岡村隆史。彼の台詞回しなんて、台本の台詞なんだかアドリブなんだか区別が付かないぐらい自然。脇に回ったせいか、かえって伸び伸びと芝居している感じだった。

 小鉄に限らず、この映画では主人公のチュンバより、その周囲の人物達の方がはるかに素晴らしい。チュンバの恋人リョーコを演じた大河内奈々子もよかったけど、この映画に登場した女の子の中ではウミ役の八木小織が可愛かったなぁ。「あたしとつき合ってよ」の高橋美香もよかった。たぶん彼女たちはこれを踏み台に、次々いろんな場所で活躍することでしょう。期待しています。

 喧嘩に青春の全てをかける少年達の中では、主人公達の中学時代のライバルである「今日からはカポネて呼ばんかい」のサダが最高! スタイルから喋り口調、身のこなしまで完璧な不良少年ぶりでした。ばちっと決まっているんだけど、笑った顔なんかはちょっと少年ぽい可愛らしさがあって、そのふたつの要素がちゃんと木下ほうかという役者の肉体の中で解け合っているところが素晴らしい。

 僕は手元に劇場でもらった(僕は松竹シネクラブの会員です)パンフレットをもっているんですが、登場した役者たちの一覧をながめていると、そのひとりひとり全員に何か一言ずつコメントしたくなるのです。この映画は岸和田に住む人々を主人公にした集団劇という面があるんだけど、登場した人物達の全員がどうしようもなく魅力を発しているから、ここでそのひとりやふたりについて述べただけでは、とてもこの映画の魅力が伝えられない。できるだけたくさんの人たちに、映画館までこの映画の中の人たちに会いに行って欲しいと思います。


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