MEMORIES

1996/01/14 丸の内ピカデリー2
『AKIRA』の大友克洋が総監督を努めたオムニバスアニメだがドラマは薄い。
目立つのは作り手の技術に対する過信と自己満足のみ。by K. Hattori



 互いに何のつながりもない3つの話を収めたオムニバス劇で、アニメーション版『トワイライト・ゾーン』といった雰囲気。正直な話、もう少し気のきいた作品をパッケージしてほしかった。僕は念のためカフェインの錠剤を飲んでいましたが、それでも生あくびが止まらない退屈さ。退屈なだけならまだしも、製作者側の自己満足だけが伝わってきて、本当に嫌になってしまった。「こんな映画を作って申し訳ない」「不本意なできですがみてください」という謙虚さ、あるいは言い訳がましさが見えかくれすればまだしも、「へっへっへ、俺たちってすごいでしょ」「どうだ驚いたか」という根拠のない自信はどこから出てくるんでしょうか。はっきり言って、こんなの客が1800円払って観るような映画じゃないよ。

 角川アニメや東映のアニメ映画みたいにマーケットを最初からセグメントして、マニアならマニア、お子さま向けならお子さま向けの作品づくりと広告展開をしてくれないと、僕みたいな客が間違えて劇場に行ってしまうからマズイよね。もっとも大友克洋の『アキラ』という映画は、一般の客が観ても充分に面白いデキだったんだから、それと同じようなものを期待されたって無理はない。『アキラ』を観て「どひゃ〜、こりゃ驚いたぜ」と感嘆の声を上げた客にとっては、『MEMORIES』でそれ以上に驚かされるなり、面白がらされるなりしないと満足できないのだよ。

 何と言っても「彼女の想い出」と「最臭兵器」はお話も絵作りもセンスが古すぎる。「彼女の想い出」は15年ぐらい前の星野之宣が描くようなアイディアだし、「最臭兵器」も20年ぐらい昔の福山庸治が描いていたようなストーリー。どちらも新鮮味はない。こんなもので面白がってちゃダメ。絵作りも『ガンダム』とか『イデオン』あたりから進歩していないんじゃないのかな。技術的なことは知らないけど、動きのテンポとかアングルに発見がない。「最臭兵器」のドタバタなんて、テレビシリーズの「うる星やつら」の足下にも及ばないぞ。

 唯一面白かったのは大友克洋本人の監督作「大砲の街」だけ。これは絵作りの密度がそのまま作品の質になっている。街の様子とか、室内の調度とか、人物たちのコスチュームとか、まるきり架空の世界をゼロから作り出すことに成功している。欠点は時間が長いことで、本当はこの半分の長さで十分だったし、その方が面白くなったと思う。同じようにゼロから世界を作ったアニメに『オネアミスの翼』があるけど、あれは意味もなくダラダラ長い駄作だった。『天使の卵』も同様。それに比べれば「大砲の街」はだいぶマシだけど、それでも長い。


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