恋恋風塵

1995/12/09 早稲田松竹
何も言わず女を待たせる男と待ちきれずに他の男と結婚する女。
幼なじみ同士の恋の終わりは少しほろ苦い。by K. Hattori



 結局幼いってことなのかもしれないけど、もっと優しくしてやれよな。と思っている内に、主人公の男は幼なじみの女の子に振られてしまうのです。やっぱりな、と思いながらも、ひとりベッドで嗚咽する主人公を見ると「ああ、俺にもこんなことあったっけな」と思い出してひどく同情してしまう。

 女の子の前でふてくされてみたり、急に不機嫌になったり。結局そういうのは全部彼女に対して甘えているってこと。甘えられるから不機嫌な顔をしていられるってことなんだけど、彼女にはそんなことわからないから不安になる。本人も自分が彼女に対して甘ったれた態度をとっているっていう自覚がないから困ってしまう。わけもなく彼女の前で不機嫌になる自分を、どうしようもなく持て余しているっていう風体なんだよね。彼女はただ、おろおろするばかりでさ。

 僕なんかそういう場所を通り過ぎて今があるから、こういう気持ちが全部わかってしまうわけさ。で、きっとこの男は振られるだろうなと、最初からわかってしまうわけね。男たるものこうして女に何度か振られたあげく、女のあしらい方を身につけて行くしかないのだよ。正直な話をすれば、僕もこの映画の主人公と同じような目に何度かあってますからね。

 この映画で一番悲しいのは、何てったって彼女と買物をしている最中にバイクを盗まれてしまうエピソードです。バイクを盗まれたのは彼女のせいじゃないってわかっていても、彼女に対して露骨に不機嫌な態度をとってしまう。あげく、彼女を見張りに立てて別のバイクを盗もうとしたりする。甘えてんです。彼女がおろおろすればするほど、男は彼女に対してサディスティックな感情の高まりを抑えきれなくなってしまい辛くあたる。僕はこの場面ほどふたりが気の毒に見えるシーンはなかった。若いっていうのか、ぶきっちょっていうのか、男が悪いわけでもないんだけど、どうしても大人になれないんだよね。よくわかるんだけど。

 台湾には徴兵があって、主人公の男も軍隊に入ることになる。彼女からの手紙に「便りがないのは無事な証拠なのでしょう」みたいなくだりがあるところを見ると、主人公の男は彼女に便りらしい便りを送っていないのだとわかる。それでも彼女からの便りは次々に来るのだから、男としては悪い気はしない。それでふたりの間のコミュニケーションが成立しているのだと誤解している。その内彼女からの便りが途絶え、あわてて出し始めた手紙は宛先不明で舞い戻るようになり、やがて家族からの手紙で彼は彼女が別の男と結婚したことを知る。ありがちなパターンなんだけど、これって世界中の男女が毎日繰り返しているパターンなんだろうなぁ。


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