若草物語

1995/08/09 丸の内ピカデリー2
ウィノナ・ライダー主演の新しいハリウッドの定番映画。
スーザン・サランドンが素晴らしい存在感。by K. Hattori



 劇場の中は9割5分までが女性客でした。女性の成長と自立を描いた、原作の力でしょうかねぇ。数少ない男性客としては、待ち時間中はちょっと肩身が狭かった。ま、映画が始まってしまえば一切関係ありませんけどね。こうまで観客が偏ってくるということは、普段映画を見ない人たちが劇場に足を運んでいるということです。

 主演はウィノナ・ライダー。彼女は今ちょうど脂ののりきった旬の女優ですね。充実した演技で物語の進行をリードします。でも、映画ファンとしてはむしろ、脇を固めた俳優たちに目移りしてしまうところです。母親役がスーザン・サランドン。これはライダーの主演と同じぐらい大きな、この映画の目玉になっています。特に前半、母親の役割が大きい部分では彼女の存在感が光ります。

 また、四女エミー役は成長に従ってふたりの女優が演じ分けますが、これが映画ファンには嬉しい配役になっています。まず、少女時代のエミーを演じるのが、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』の少女吸血鬼役で主演のトム・クルーズとブラッド・ピットを食ってしまい、世界中の映画ファンを震撼させたキルスティン・ダンスト。年頃の娘に成長したエミーを演じるのは、『スーパー・マリオ』でお姫さまを演じたサマンサ・マチス。前半のダンストは少ない登場ながら、相変わらずの伸び伸びとした演技で場をさらってしまう。恐るべし。後半はエミーのエピソードが多いにも関わらず、前半のダンストに比べるとマチスは精彩がない。これは演出の比重が主人公ジョーに重きを置いているのでやむを得ないのかな。ちょっと平板な人物造形になっていたのが残念です。

 キャスティングで僕が唯一違和感を感じたのは、主人公ジョーの恋人である教授役をガブリエル・バーンが演じている点。バーンはいい役者だし、この映画でも一生懸命朴訥で誠実な中年男を演じている。でもねぇ、彼が今まで演じてきた中で印象的な役ってのが『ミラーズ・クロッシング』の二重スパイのギャングだったり、『アサシン』の秘密暗殺組織の元締めだったりするわけじゃないですか。彼がどんなに誠実そうに振る舞っていても、僕には腹にいちもつあるように見えてしょうがない。彼は絶対に裏では悪いことをやっているんだよ。あのラストシーンを観て、ウィノナ・ライダー演ずるジョーの先行きにひどく不安を感じる僕です。

 総じて良くできた映画だと思うんだけど、数珠繋ぎのエピソードが細切れで、次々流れていってしまうのがもったいなくてしょうがない。まるで大河ドラマのさわりを集めた総集編。この映画に一番欠けているものは、充分な上映時間です。前編後編に分けて、それぞれ2時間ずつは観せてほしい。


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