史上最大の作戦

1995/08/06 シャンゼリゼ
連合軍のノルマンディー上陸作戦を描いたオールスター映画。
若い日の大スターが端役だったりする豪華さ。by K. Hattori



 過去に何度かテレビで見たことがあるこの映画も、劇場の大画面で観るとやっぱり違うなぁ。全体のあらましや小さなエピソードまで、たいがいのものは憶えているんだけど、それでも今回発見したところは多い。スクリーンの情報量というのは大したものですね。それに何と言っても、画面を埋め尽くす膨大な兵士たちの数に圧倒される。逆に言うと、今回この映画を劇場で観た価値というのはそれしかないとも言えるんですね。上陸した海岸を埋め尽くす、見渡す限りの兵士たち。その上を悠然と飛行するドイツの戦闘機と、操縦席から見た地上の兵士たちの様子。このシーンは今回のリバイバル上映のための予告編にも引用されていたシーンだけど、この一場面を見ただけで、今回は劇場に足を運ぼうと決心したものです。

 物語の土台には全て実際のエピソードがあるのだろうけど、この膨大な挿話を一本の映画にまとめあげた脚本家と編集スタッフの苦労は思ってあまりありますね。それぞれ別々の場面を別々の角度で描きながら、全体の印象が散漫にもバラバラにもならないのはすごいことです。全員がひとつの目的に向かって突き進んで行く、まさに『史上最大の作戦』の全貌がつぶさに描かれている。もちろん、ここでは描ききれないエピソードもたくさんあったでしょうが、そうした無数の省略の向こう側にある物語も感じさせるところが、この映画の良さではないでしょうか。作戦を指揮する将軍たちや、現場の下士官、兵士のひとりひとりにまで目が行き届いている。特に連合軍側の兵士の描き方は、じつに周到です。ドイツ側の描き方が将校に偏るのは、アメリカ映画だからしょうがないとしても、飛行機を取り上げられた古参パイロットの憤りや、前線から引き上げる傷ついた兵士の列に戦闘機が機銃掃射をする場面、塹壕から両手を上げて出てくるドイツ兵を連合軍の若い兵士が撃ち殺してしまう場面など、敵味方にこだわらず戦争の過酷さを描いているのも、この映画のコクになっている。

 大がかりな歴史スペクタクルという感じだが、忘れられない映画的な名場面というのも多い。水平線の向こうから、朝もやをついて無数の艦船が姿を現す場面は鳥肌が立つぐらい素晴らしい。嵐の前の静けさから一転して激烈な艦砲射撃の渦になる、この場面の緊張感とカタルシス。また、フランス語の日常会話を反芻しながら落下傘で降下した兵士が、教会の鐘楼に引っかかり、見方の兵が全滅する場面をなすすべもなく見守る場面の何と劇的なことか。僕はこの場面が一番のお気に入りですね。

 随所に見られるユーモアがスパイスになって、全体をきりりと引き締めるのも見事。長い上映時間を、決して飽きさせない、傑作のひとつだと思います。


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