バットマン・フォーエヴァー

1995/07/23 丸の内ルーブル
ティム・バートンの作り上げた異世界も監督交代で木端微塵。
テレビ特番みたいな底の浅い娯楽大作。by K. Hattori



 主演俳優が替わったとか、相棒ロビンが登場するとか、監督がティム・バートンからジョエル・シュマッカーにバトンタッチされたとか、ゴッサムシティの様子が一変したとか、いろいろ話題のバットマン第3弾。あれこれ注文を付けたくなるところもあるが、他愛のない娯楽作品として楽しめたことだけは確か。ただ、前2作には単なる娯楽作品の枠を超えた、作者の体臭のようなものがあったから、そこに魅力を感じる人にとって、今回の映画は物足りないデキだろう。

 1作目のジャック・ニコルソン、2作目のクリストファー・ウォーケンとダニー・デビートに続き、今回の悪役はトミー・リー・ジョーンズとジム・キャリー。ジョーンズは『依頼人』に続いてシュマッカーの映画に連続出演だが、今回のトゥーフェイスという役柄は影が薄かった。これはもちろんジョーンズの役者としての才能云々より、脚本の問題に帰するべき事柄。トゥーフェイスの奇行の原動力となる動機が、どうも釈然としない。その点がひどく弱いのだ。逆に、キャリー演ずる相棒リドラーのマッド・サイエンティストぶりは秀逸で、その分だけますますトゥーフェイスの影が薄くなる。硫酸で顔の半分を溶かされ、右半身と左半身が別人格というアイディアは漫画チックで面白いのになぁ。アイディアがきちんと脚本の中でこなれていないのが残念。

 それにしても、今回登場したロビンの活躍はいささか中途半端だった。サーカスの空中ブランコ乗りという設定で、身の軽さをアピール。トゥーフェイスの爆弾テロに果敢に挑む姿は、彼のまっすぐな正義感を強く感じさせるエピソードの組立だった。ところが、彼のキャラクターが生かされている部分がほとんど物語に現れないのは残念で仕方がない。さんざんもったいぶったあげく、特性のスーツに身を包み、バットマンと共に敵地に乗り込むロビンだが、乗り込んだとたんにあっけなく敵に捕まってしまう間抜けぶり。なんだ、結局足手まといになっているだけじゃないか。ロビンに関しては、今回登場したということにだけ意味があるようですね。次回作以降は活躍が期待できそうです。

 主演のヴァル・キルマーは今まで作品に恵まれなかった人で、今回の映画でも「『トップガン』のヴァル・キルマー」という紹介になっている。彼も映画好きにはお馴染みの顔だったんですけど、ここで一気にメジャーな俳優になれるんでしょうか。ただ、ブルース・ウェイン役にしては、ちょっとチンピラっぽいかなとも思うけど……。ま、いずれ馴染んでくることでしょう。

 意外に良かったのはニコール・キッドマン。女優として脂がのってきたって感じです。期待していなかっただけに、予想外の拾いものでした。


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