独立愚連隊

1995/03/18 大井武蔵野館
従軍慰安婦が登場する作品として貴重な映画。
中身は西部劇の翻案みたいなものです。by K. Hattori


 オープニングは西部劇風の騎馬シーンからはじまるが、物語は兄が弟の死の謎を究明して犯人に復讐するという探偵映画風。さらに男と女のロマンスがあり、友情があり、男と男の意地がぶつかりあって、舞台は戦場。これだけ具だくさんの内容を、1本の映画に凝縮した脚本は見事なものだ。物語がほとんどだれない。登場人物たちの造形も陰影に富んだもので、たっぷり感情移入できる。

 軍組織上層部の不正を知ったがため、邪魔者扱いされ、戦場の最先端、敵陣深く陣地を作って全滅させられるのを待つ独立愚連隊。そんな絶望的な状況にあっても、愚直に上官の命令に従い続けようとするのは、男の意地からである。露骨に死ねと言わんばかりの命令に、黙々としたがう男たちの姿。意地のために命を捨てようとは、他人から見れば馬鹿馬鹿しかろう。しかし、こうした男たちの生き方をかっこいいと感じるのも、また事実なんだなぁ。

 上意下達が徹底している軍隊という組織の中で、あえて死地におもむくような命令に従うということで、逆に自己主張する愚連隊。自分たちの行動が作戦上ほとんど無意味だと知りながら、男たちがこだわり、守ろうとするのは、男の意地とほこりだ。彼らにとって、それは命より重い。

 新聞記者と偽って部隊に侵入し、弟の死の真相を突き止めようとする佐藤允演ずる主人公より、どうしたって愚連隊の連中に感情移入してしまう。このため、映画全体の印象がぱっくりとふたつに割れてしまった。エピソードが盛りだくさんなので、その割れ目はあまり致命的なものにはなっていないが、映画の中盤までは、観ていてなんとなく居心地が悪く感じた。しかし、このなんだかギクシャクした展開もそれなりに魅力的。中盤以降、事件の真相が明らかになって物語がスラスラと流れ始めると、前半の暑苦しい印象が、とたんに懐かしくなってくる。

 主人公が悪党を追いつめる終盤のクライマックスは、乾いた砂と廃虚の中で、ピストルを手にしての1対1の対決。これはまるで西部劇だな。オープニングも西部劇っぽかったし、ガンアクションも西部劇風の演出。主人公が悪党にとどめをさすシーンは、演出がものすごくしゃれている。スマートですね。

 このあとだめ押しのようにやってくる、中国軍との戦闘シーン。壁のすき間からちょろちょろ動く人影が見え、それが津波のように壁を乗り越えてくると、画面は人間で埋め尽くされる。ありの大群のように画面をなめて行く人の波。この迫力。

 主人公をどこまでも追いかけていった雪村いづみは、あれで幸福だったのかな。きっとそうだよね。最後はちゃんと彼の腕に抱かれて死んで、彼の妻として葬られる。彼女の惚れた相手は、愛情を口に出して表現することのない、昔の男だったよ。


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