酔拳2

1994/12/14 ニュー東宝シネマ1
実在した英雄ウォン・フェイフォンの若き日を描いたシリーズ第2作。
バランスはいいが小ぎれいにまとめ過ぎた感じ。by K. Hattori


 同じウォン・フェイフォンを主人公にしていることもあって、どうしてもツイ・ハークの『天地大乱』と比べてしまう。冒頭が同じように列車のシーンだったことも、連想を強める結果を生んだ。よくわからないのだが、どうやらジャッキーの映画の方が、より若いころのフェイフォンを描いているらしい。リー・リンチェイのフェイフォンも素晴らしかったが、ジャッキーの演じる主人公もこれまた素晴らしいできばえ。脚本がきちんとした正統派の青春ドラマになっていて、若者が両親や精神的な師、友人等に取り囲まれながら、少しずつ成長する様子をていねいに描いている。すでにオジサンぽいジャッキー・チェンだが、この映画ではそんなことがぜんぜん気にならない軽やかな身のこなしと、余裕さえ感じさせる芝居で、青年フェイフォンになりきっている。

 見せ場である殺陣(とあえて呼ぼう)とストーリーの組立に無理がなく、じつに巧妙な構成になっている。映画開始直後の列車下や床下での殺陣も、せまい空間を逆手に取ったスリリングな攻防が、観ている者をわくわくさせる。市場での腕試しをへた後、広場で悪役数人を相手にした酔拳の披露となるが、この殺陣はフェイフォンの母親が技をひとつひとつ解説してくれる親切ぶり。これがラストで生きる。

 ここまでは比較的オーソドックスな殺陣の組立だが、白眉は茶店で先輩と話をしているところを、百人以上の敵に襲われるシーンだろう。延々続く大活劇だが、単調にならず、次々に新しいアイディアとアングルで存分にアクションを見せてくれる。

 ラストシーンの製鉄所シーンは、ある意味でお約束通りの展開。それでも押さえるツボはきちんと押さえていて、なかなか気持ちがいいんだなぁ。カメラがぐいつい主人公に寄っていくと、着物の裾をババッと払って決めのポーズ。う〜ん、かっこいい!

 ひとつひとつのアクションシーンが、物語の中に無理なく取り込まれていて、しかも全てが違うコンセプトで組み立てられている。大がかりな殺陣がいくつも連続するくせに、全く飽きさせないのは見事と言うしかない。活劇のお手本みたいな映画だ。

 物語、活劇、風俗の描き方、人物の描き方もバランスが取れていて、娯楽作品としては一級のでき。中でもフォンフェイの母親がいい味を出している。このひと、ジャッキーの5倍は笑いをとるのだ。人参だと言いながら大根をさしだすシーンとか、「お腹の赤ちゃんが……」と突然告白するシーンには笑った。あの赤ちゃん話は口から出まかせなのかと思っていたら、どうやらそうでもないらしいのね。

 若者の成長、親との葛藤、友情、愛国心、同志愛。いろんな内容が詰め合わされた映画だけど、それらをきちんとこなれた娯楽作品に仕上げた手腕は見事。終わり方がいかにも香港映画なんだけどね……。


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