蜘蛛女

1996/01/02 文芸坐2
レナ・オリンのパワフルな悪女ぶりにオールドマンたじたじ。
地味な映画の割にキャストは豪華。by K. Hattori



 『氷の微笑』をしのぐ悪女モノというのがうたい文句ですが、看板に偽りなし。大きな口を開けてガハハと笑うレナ・オリンには寒気がしますなぁ。こんな女の人がそばにいたら、僕は逃げます。ゲイリー・オールドマンも逃げればいいとわかっていながら、なぜかこの女にかかずりあってしまう。世の中はうまくいかないものです。

 女はマフィアの殺し屋。しかも凄腕で手段を選ばない、ダーティーな殺し屋です。男は刑事。その一方でマフィアに情報を売り、報酬を受けている。刑事としての年収は4万ドル。情報が1件6万5千ドル。妻ひとり、愛人ひとり、手をつけた女多数。悪くない暮らしです。男が流した情報をもとに、FBIが保護している重要証人が殺されます。しかもFBIの係官ごと。殺し屋はレナ・オリン。彼女に殺しを命令した組織も、彼女のなりふり構わぬ行動に、その存在が負担になってきます。組織が刑事に下した依頼は、彼女の居所を通報すること。彼女をさんざん使ってきたマフィアは、邪魔になった彼女を殺そうとするのです。しかし、刑事の情報は彼女が逃走したことで無価値になる。マフィアのドンであるロイ・シャイダーは、オールドマンにレナ・オリンを殺すことを命令します。命令に従わなければ、オールドマン自身はおろか、妻も愛人も殺すと脅すのです。あーあ。おきまりのパターンね。

 キャスティングに難アリ。これだけ陰々滅々たる物語にスターが出演しないのは問題です。脚本そのものはコンパクトでスピーディーなのだから、これで主演の刑事にスター男優を使えばもう少し観やすい映画になったはず。オールドマンはうまい「役者」だと思いますが、それだけではどうもイカン。例えばアレック・ボールドウィンあたりで撮れば、また違った映画になっていたと思います。レナ・オリンの女殺し屋は迫力があってグッド。しかし、彼女の熱演もそれを受けとめる俳優がいなかったことで、映画の中で収まりが悪くなってしまっている。原題は"Romeo Is Bleeding"。調子のいい色男が悪い女にひっかかって、グチャグチャの泥沼に足を突っ込む映画です。しかしその色男がオールドマンでは説得力がない。

 何とも後味の悪い映画でした。


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