毎日が夏休み

1994/05/20 ヤマハホール(試写会)
大島弓子原作のファンタジー。監督は金子修介。
新人佐伯日菜子の鮮烈なデビュー作。by K. Hattori



 大島弓子原作のファンタジックな物語。郊外の住宅地を舞台に、ちょっと風変わりなお話を見せてくれます。見終わるとしみじみとしあわせ。そんな気持ちにさせてくれる映画です。

 主人公・林海寺スギナを演じる新人の佐伯日菜子がヨイ。抑揚のない棒っきれのようなしゃべり方は「ヘタクソ」なのかもしれないが、相手役の佐野史郎がこれまた抑揚の少ない冬彦さん状態なので、アンサンブルとしては悪くない。むしろこの二人にはさまれた風吹ジュンの、あくまでも日常から飛翔できない存在感が気になりました。画面がみょうに明るく、クレーン撮影をはじめとする徹底したカメラの移動も相まって、全体にふわふわした画面が続きます。この映像と役者の芝居がかった演技があつかっている題材の深刻さを中和し、映画全体をとてもなごやかでスベスベしたものにしているのです。

 監督の金子修介は『1999年の夏休み』でも、やっぱり少女漫画を映画にしたひと。でもこの映画を未見の僕にとっては、『就職戦線異状なし』『咬みつきたい』『卒業旅行/日本から来ました』の監督です。僕はこれらどの作品も大好きで、今回「金子修介の新作」と聞いただけで胸が高鳴りました。そして、その期待は裏切られることがありません。アート指向の人には無縁かもしれないけれど、エンタテインメント指向の人は目を付けておいた方がいい監督ですよね。

 大作ではないし、大々的にオススメするという映画でもないけれど、ちょっとシアワセな気持ちになれる映画だってことだけは太鼓判を押しちゃう。落ち込んでるときや、気持ちがくさくさしてるときに観ると、結構イイかもしれません。どこまでも明るく、どこまでも前向きにポジティブに生きていれば、きっとしあわせになれるさ。そんな勇気をちょっぴり与えてくれるかもしれない映画でした。


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