我が人生最悪の時

1994/05/18 シネスイッチ銀座
林海象監督・永瀬正敏主演の私立探偵濱マイクシリーズ第1弾。
モノクロ映像のスタイリングに流れた凡作。by K. Hattori



 先月だったか先々月だったか、横浜の実家に帰ったことがあったのですが、その帰り道に伊勢佐木町をぶらついていると、その日がちょうどこの映画の初日。黄金町・横浜日劇の前は行列ができてました。普段なら、あの辺りは閑散としてるんですけどねぇ。僕は今日銀座の劇場でこの映画を観ましたが、この映画はやっぱり横浜のアノ映画館で観るのがベストかもしれないなぁ。シリーズ次回作はぜひとも横浜日劇で観ようと決心しました。

 この映画の見どころは、なんと言っても主人公・浜マイクを演じる永瀬正敏のかっこいいヒーローぶりでしょう。しびれた人も多いと思います。(『アジアン・ビート』なども含め、最近の林海象作品のレギュラーですね。)しかしながら、僕の印象では永瀬の影がやたら薄い映画でした。こう言ってはなんですが、永瀬は「役者」なんですね。「役者」が本来「スター」が演じるべき役柄を演じても、どこか無理があるような気がします。僕はこの映画を観て、永瀬が必死にスターを演じようとしているように見えてしょうがなかった。彼はしばしば画面の中でスター風のオーラを発しますが、そのオーラも本物のスター俳優・宍戸錠の登場であえなく霧散してしまいます。

 物語は荒唐無稽、大風呂敷、大盤振舞、大ぼらふきの大活劇。モノクロームの映像は艶があり、スタイリッシュ。あのごみごみとした横浜の風景が、こんなに色っぽく撮れるものだとは思いませんでした。この大きな器の中で、永瀬正敏はあまりにも小さい。コジンマリしすぎです。僕はむしろ、同じ林海象の映画『ZIPANG/ジパング』に主演した高嶋政広あたりの方が、スケール感があって適役ではないかと思ったりしますね。当然、異論はあるでしょうけど……。

 話は変わるけど。黄金町あたりの風景って、黒澤明の『天国と地獄』の頃とあんまり変わりませんねぇ。モノクロでシネスコサイズの映画だから、よけいにそう感じたのかもしれない。


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