いつかギラギラする日

1992/09/12 渋谷松竹セントラル
荻野目慶子のいかれたアーパーぶりだけが印象に残る。
中年の悪党たちの話だが演出も年寄り臭い。by K. Hattori



 昨日、初日5時20分からの回を渋谷松竹セントラルで観賞。

 オープニングから最後のカーアクションまで飽きさせない。荻野目慶子が「ありゃりゃ?」だが、この原因の半分は観客が荻野目と木村一八がグルになることを初めから知っているためで、彼女が木村と共に銃撃戦を始めるとほとんど気にならなくなる。(「ありゃりゃ?」の残りの半分はメイクに原因がある。)ひたすらアクション映画なので、内容についてここで話すことに意味はない。しいて言えば、ルパン三世を実写で映画にするとこんな感じになるのかも。

 嫌いな人は嫌いで結構。僕は大好き。ビデオでは味わえない興奮を、できるだけ大勢の人に味わってみてほしい。僕が観たときは、館内7・8分の入り。この映画がヒットせずにアニメや『エイリアン3』ばかりがヒットするようでは、日本の映画界に明日はない。『大誘拐』の例もある。日本映画もヒットするというところを見せてほしい。

 映画ファン必見! (金券ショップには安いチケットが出回ってるぞ〜。)




 サスペンスやリアリティは、僕もあまり感じませんでした。むしろこの映画は、そうしたものを拒否しているようにも見えます。

 ヤクザの親分に八名信夫を持ってきたあたりにも、それは表れています。10年前ならいざ知らず、今どき八名信夫を悪役に使うなんてギャグ以外の何物でもない。金庫の中に、わずか100万円。まがりなりにも金融業者の金庫に、現金が100万円しかないなんてことが考えられますか? この親分は、殺し屋の原田芳雄に頭が上がらないという、非常に情けない人でもあります。このシーンは、笑いを取りたいのだと判断しました。

 この映画は、中年ギャングが裏切った若者に復讐する話だと思われているようですが、それは違うと思います。萩原健一の中年ギャングが執着するのは、あくまでも奪った金です。だから裏切った本人を追いかけずに、金を貸したヤクザの事務所に行ってしまうわけですよね。木村一八も最初は借金を返すために金を必要としていたわけですが、金を貸したヤクザが殺し屋を送り込んできた後はこの目的も失われます。それでも木村一八が逃げ続けるのは、やはり金に対する執着でしょう。

 人物のステレオタイプな描写ですが、僕はもっと徹底したほうがいいと思ったくらいです。八名信夫はへんなチャメッケを出すべきではなかったし、多岐川裕美も黙ってギャングの情婦を演じていればよかったと思う。それに比べると、いかにも曰くありげな靴屋を演じていた安岡力也、いかにもアブナイ殺し屋を演じていた原田芳雄。この二人はよかった。

 御都合主義はアクション映画の常。アクションのために、映画の筋を作るのです(多分)。アクションに必然性があるか否かは、脚本の責任。出たとこ勝負のいい加減なアクションに見せないのは、演出の責任でしょう。『いつかギラギラする日』は脚本に凸凹したところが見えますが、演出は悪くないと思います。少なくとも『ダイ・ハード2』よりは、よくできた映画です。

 『大誘拐』はトリックが物語の軸になっていますから、必然的に緻密な脚本になります。しかもアクション映画ではありませんから、『いつかギラギラする日』と同列には語れません。

 警察が大事件に対して無能なのは、マスコミを通じだ報道でよく知られているところです。ヘリコプターまで使った追跡で犯人を見失い、人質の子どもを殺されてしまったこともありましたよね。路地に追い込んだ犯人の車が、警察の車に体当たりして逃げたのも同じ事件かな? (もっとも、この映画では警察の影が非常に薄い。警察はラストシーンのためだけに存在する。)

 この映画は『ブルース・ブラザース』を相当意識していると思います。特に大量のパトカーを壊すシーンや、カーチェイス、追跡劇のスタイルに影響が見られます。比較するのも面白いかも...。

 ラストでパトカーがびっちりと間を空けずに駐車しているのは、まさにアレがやりたかったからでしょう。僕は拍手喝采でした。よくぞここまでやった、と言ったところです。アメリカに、車輪の大きなトラックで乗用車を踏み潰すショーがありますよね。あれを物語の中に持ち込んだのでしょう。(必然性を求めるなら、車間を空けた非常線を破るシーンが、何度かあることはありますね。)

 安岡力也は死んでません。少なくとも僕と、一緒に映画を見ていたツレは気がつかなかった。

 この映画はマンガです。だからこそ、『ルパン三世』だと言ったのです。シリアスとも、コメディーともつきません。オープニングは悪漢活劇風。エンディングは『豆腐屋直次郎の裏の顔』だとツレが言っていました。



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