フォンターナ広場

イタリアの陰謀

2013/12/06 シネマート六本木(スクリーン3)
1969年12月にイタリア・ミラノで起きた銀行爆破テロ事件。
その真相を探ろうとする実録サスペンス。by K. Hattori

13120601  2005年5月4日の日本の新聞に、イタリアから帰化して東京に住む波元路伊(イタリア名はデルフォ・ゾルジ)という男性に対して、イタリアの最高裁が無罪判決を言い渡したという記事が掲載された。彼は1969年12月12日にイタリア・ミラノで起きた全国農業銀行爆破テロ事件の容疑者として、本人不在のまま裁判が行われていたのだ。この爆破事件では100人を超す死傷者が出たが、ゾルジ氏も含めて起訴された容疑者はことごとく証拠不十分で無罪となった。17人が亡くなり、88人もの人が傷ついたこの事件で、罰せられた者はひとりもいない。まさにイタリア現代史のミステリーだ。映画『フォンターナ広場 イタリアの陰謀』は、この謎めいた事件について、事実をもとに描いた見応えのあるサスペンス・ミステリー映画になっている。

 映画は当時ミラノの警察に勤務していたカラブレージ警視の視点で語られる。当時のイタリアは東西冷戦の最前線で、国内では極右勢力と極左勢力の壮絶な権力闘争と勢力争いが行われていた。右も左も目的のためには手段を選ばない暴力路線。共産主義者やアナキストといった左側と、右側のネオファシストたちが互いの手の内を探りながらにらみ合っている。カラブレージは少し前に起きた列車爆破事件の捜査をする中で、ミラノのアナキストグループをまとめるピネッリという男に接近していく。列車爆破事件にはアナキストグループか、そこから抜けた過激派が犯行に関わっていたのではないか? そうこうしているうちに起きたのがフォンターナ広場での銀行爆破。これを極左グループによる犯行と見た警察は、ピネッリやその仲間たちを次々に逮捕。だがカラブレージの部屋でピネッリを取調中、ピネッリが部屋の窓から「転落死」する事件が起きる。たまたま席を外していたカラブレージには、そこで何が起きたのかわからない。警察は取り調べで追い込まれたピネッリが自殺したのだと発表するが、記者も世間もそんなことは信じないのだった……。

 原案・脚本・監督は『ペッピーノの百歩』や『輝ける青春』のマルコ・トゥリオ・ジョルダーナ。6時間の大作『輝ける青春』を手掛けたジョルダーナ監督はこの映画にも本当ならたっぷりと時間をかけたかったのかもしれないが、今回は2時間9分という普通サイズの作品になっている。ただし登場人物が多く、出来事も複雑にからみ合っているので、このサイズでは描ききれなかった部分が多いと思う。ダイジェスト版という印象は受けないものの、カラブレージとピネッリの立場を超えた信頼関係がもう少ししっかり描けているとよかったと思う。また後に赤い旅団の誘拐テロで犠牲となるモーロ外相のエピソードや人物像、事件にカラブレージとは別の立場からアプローチしていく情報局副局長のダマートについても、もう少したっぷり描いてほしかった。

(原題:Romanzo di una strage)

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