ゼロ・グラビティ

2013/11/27 ワーナー映画試写室
0Gの宇宙空間を舞台にしたスリル満点の脱出サスペンス。
これは大画面で観るべし。3Dで観るべし。by K. Hattori

13112701  原題は『Gravity』だが、邦題は『ゼロ・グラビティ』になっている。「Gravity」は重力のこと。重力の単位を示す「G」は「Gravity」の略号なのだ。地球上の重力は「1G」だが、宇宙空間の無重力状態は「0G」、つまり「ゼロ・グラビティ」になる。この映画は最新のCGと特殊効果を使って、観客を衛星軌道の0G空間に連れて行く。眼下の地球と天上の星空以外、見渡す限り何もない衛星軌道の0G空間。だがそこは生身の生命が決して維持できない、過酷な世界でもある。映画のほとんどはこの0G空間を舞台にしているので、邦題の『ゼロ・グラビティ』もそれほど悪いタイトルじゃない。ただ映画の原題が単に『Gravity(重力)』だということを知っていると、映画の結末の印象が多少違うものになるかもしれない。

 ロシアが自国の不要衛星を処分しようとミサイルで爆破したところ、粉々になった破片が周囲の衛星に次々衝突して連鎖反応的な事故を起こす。衛星軌道上で作業していたNASAのスペースシャトルもこれに巻き込まれ、船外作業をしていたストーン博士とコワルスキー飛行士が宇宙に放り出されてしまった。ふたりは何とかシャトルに戻るが、そこは既に全滅状態で地球に帰還するすべはない。ふたりは地球帰還のために、近くの国際宇宙ステーションを目指す。はたして彼らは、地球に戻ることができるのか?

 物語は単純。密室に閉じ込められた主人公たちが、そこから脱出しようとする物語だ。外部の助けが得られない孤立無援の状態で、しかも外との連絡がまったく付かなくなる。同じストーリーラインを持つ映画が、これまでに何十本、何百本作られただろう。だがこの映画ではその「密室」が、無限に広がる宇宙空間になっている。何もない広大な空間こそが、主人公たちを閉じ込めてしまうという逆説が、この映画を成り立たせている最大のアイデアだ。無限に広がる密室の中で、主人公は百キロ以上の距離を移動する。

 密室脱出のサスペンス映画であることに加え、この映画は『真昼の決闘』(1952)などと同じリアリタイム映画でもある。時間省略をほとんど行わず、映画の中の時間経過がそのまま映画の上映時間に一致するのだ。スペースシャトルが最初に衛星破片群に襲われてから、次に同じ破片群が襲って来るまでおよそ1時間半。それがそのまま映画の上映時間になっている。途中で少しずつ時間を省略するところがないわけではないが、映画はほぼノンストップで主人公に密着し続ける。これによって映画を観ている側は、否応なしに主人公に感情移入してしまうのだ。

 3Dの映像効果にも目を見張るものがあり、これは大画面かつ3Dで観てこそ真価が発揮される映画だと思う。この映画によって、観客は無重力の宇宙空間を疑似体験することができるのだ。今後はこの映画が「宇宙もの」のひとつの基準点になるだろう。

(原題:Gravity)

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12月13日(金)公開予定 丸の内ルーブルほか全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
2013年|1時間31分|アメリカ|カラー|スコープサイズ|ドルビーサラウンド7.1、5.1chリニアPCM
関連ホームページ:http://wwws.warnerbros.co.jp/gravity/
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