潔く柔く

2013/10/17 TOHOシネマズ六本木ヒルズ(スクリーン4)
第26回東京国際映画祭 特別招待作品
いくえみ綾の同名コミックを長澤まさみと岡田将生で映画化。
心の傷を抱えた若者たちの物語。by K. Hattori

13101701  幼馴染みのカンナとハルタが高校に入学する。同じクラスには稔邦と朝美という新しい友達もでき、4人はいつもつるんでいる仲良しグループになる。しかし4人は「友達」という関係から発展しない。ハルタはカンナが好き。カンナもハルタのそんな気持ちに気付きつつ、気持ちはいまだ「幼馴染み」のままなのだ。花火大会の夜、稔邦はカンナをデートに誘い出す。ふたりはハルタに後ろめたい気持ちを持ちつつ、手をつないで人混みを歩くのだ。しかし同じ頃、ハルタは交通事故死。カンナに気持ちを告げようと、彼女の家に向かう途中のことだった……。それから10年以上の年月がたった。故郷を離れて東京で働くようになったカンナは、高校時代に抱えた罪の意識に今も縛られ続けている。彼女はある日、自分と同じような心の傷を持つ、赤沢禄という男に出会った。

 カンナを演じるのは長澤まさみで、禄を演じるのは岡田将生。どちらも劇中で高校生を演じている場面があるが、それなりに高校生らしく見えているのは大したものだ。この年齢演出については、高校生のハルタを高良健吾に演じさせたのが効いている。ハルタは高校生で死んでいるから、大人になって以降のエピソードがないのだが、こうやってキャスト全体の年齢を揃えることで、全員が高校生に見えるようになるのだ。

 原作は未読だが、Wikipediaによると原作は登場キャラクター個々のエピソードが、同じ世界観の中でゆるやかに連携しながら別々に語られるオムニバス風の構成になっているようだ。映画は原作の最終章をベースに、必要に応じてそれ以前のカンナ編や禄編のエピソードを織り交ぜた内容になっている。これは脚本も三部構成にして「カンナ」「禄」「最終章」としてしまう方法もあったはずだが、脚本の田中幸子と大島里美はカンナのエピソードを時系列に繋ぎ、そこに禄の過去をインサートする構成にした。

 こうすることで映画としてのまとまりは出たが、禄の過去のエピソードが入るたびに、カンナと禄の現在の物語が中断してしまうという欠点もある。カンナのエピソードを時系列でつなぐなら、禄のエピソードはもっと要約してもよかった。この映画では、禄のエピソードに出てくる池脇千鶴がかなりうざいのだ。彼女のエピソードは本来、禄がカンナと出会う前にほとんど決着が付いている。だがそれが回想シーンとして割り込んでくることで、池脇千鶴が禄とカンナの関係の深まりを邪魔しているように見えてしまうのだから困ったものだ。

 映画のキャッチコピーは「大切な人を失っても、人はまた愛することができるのでしょうか。」だが、これは少し内容をミスリードしている。主人公たちはそれぞれ身近な人を失って苦しむわけだが、その中心にあるのは「彼(彼女)をもっと大切にすれば死なずに済んだのに」という後悔と罪悪感なのだ。

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10月26日公開 TOHOシネマズ渋谷ほか全国ロードショー
配給:東宝
2013年|2時間7分|日本|カラー|ビスタサイズ|ドルビーSRD
関連ホームページ:http://kiyoku-yawaku.com
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
原作:潔く柔く(いくえみ綾)
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