エンド・オブ・ウォッチ

2013/08/02 松竹試写室
サウスセントラル地区を担当する警官たちの日常。
悪徳警官はひとりも出てこない。by K. Hattori

13080202  警官や刑事が主人公になっている映画には2種類ある。ひとつは事件の謎を解き犯人を追跡するディテクティブ・ストーリー(探偵映画)であり、もうひとつは警察組織内部での人間関係や政治を描いた作品だ。日本では圧倒的に前者であることが多いが、アメリカ映画では前者と後者がバランスよく出てくる。後者でしばしば描かれるのが、汚職警官や潜入捜査だ。本作『エンド・オブ・ウォッチ』も後者に属する映画だが、汚職警官も潜入捜査も登場しないのがユニーク。ここではパトロール警官たちの日常が淡々と描かれているだけなのだが、それでいて映画全編にピリピリとした緊張感が満ちている。それもそのはず。この映画の舞台はロサンゼルスのサウスセントラル地区。そこは黒人とヒスパニックのギャング同士が勢力争いを繰り返し、中南米の麻薬カルテルも手を突っ込んでいるという犯罪の巣窟なのだ。ギャングたちは警官相手でも躊躇なく銃の引き金を引くし、麻薬中毒者は相手が警官であれ誰であれ見境なく銃をぶっ放す。

 主人公はロサンゼルス市警のパトロール警官コンビ。白人(アイルランド系だろうか?)のテイラーとヒスパニック系のザヴァラは、警察学校で共に学んだ仲だ。担当しているのは犯罪の巣窟サウスセントラル地区で、警官にとっても危険の多い地区だ。街中での銃撃戦で相手を射殺したこともある彼らだが、彼らはヒーロー気取りの男たちでもなければ、自ら好き好んで危険を買って出ているわけでもない。パトロールに出るときは、いつだってできれば平穏無事に済ませたいと思っている。だからその日ふたりは、「一人暮らしのおばあさんと連絡が付かない」という通報に応じることにした。近所に散歩に出ているか、裏庭の納屋掃除でもしている本人を見つければ一件落着の簡単な仕事だ。だがこれが、地獄の釜の蓋を開ける大事件につながっていく。

 「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ!」というのは日本の警察映画『踊る大捜査線』の中の台詞だが、本作『エンド・オブ・ウィッチ』はそれを映画全編で徹底している作品だ。物語のほとんどは現場で語られる。警察署のシーンや、主人公たちのプライベート領域でのシーンはごくわずか。これが映画に定点観測のような独自の視点を作りだし、物語全体にドキュメンタリータッチの迫力を生み出す。また車載カメラや小型のビデオカメラを使ったPOV映像も多用され、これが映画の生々しさを際立たせる。POVを使ってもそれ一辺倒にしていないのがいい。方法にこだわらないことで、表現の柔軟性が増しているのだ。

 主演のジェイク・ギレンホールとマイケル・ペーニャが良かったが、特にギレンホールは感情の振幅が大きな役を熱演している。彼の恋人を演じたアナ・ケンドリックもチャーミング。10代の頃に実際にサウスセントラル地区に住んでいたというデヴィッド・エアー監督が、本作では脚本と製作を兼務している。

(原題:End of Watch)

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8月17日公開 丸の内TOEIほか全国ロードショー
配給:プレシディオ
2012年|1時間49分|アメリカ|カラー|ヴィスタサイズ|デジタル5.1ch
関連ホームページ:http://gacchi.jp/movies/eow/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
輸入DVD:End of Watch
輸入Blu-ray:End of Watch
サントラCD:End of Watch
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