JAPAN SHORTS

2013/07/10 アキバシアター
10分程度の短編映画を6本上映するオムニバス企画。
断然面白い!と言える作品がないのは残念。by K. Hattori

13071002  公益法人ユニジャパンが、経済産業省コンテンツ産業人材発掘・育成事業(若手映像等人材発掘育成・国際ネットワーク構築事業)の一環として製作した6本の短編映画を、新宿バルト9など全国6箇所の映画館と、オンラインシネマで企画上映する『JAPAN SHORTS』の試写を観てきた。以下、映写された順番に各作品の内容と簡単な感想。

 『少女と、女』。地方の大型スーパーで売り場係として働く女性と、新人アルバイトの女子高生。このスーパーが出来る前、同じ場所にはパチンコ屋があったのだが、そこで何件かの幼児置き去り事件が起きていた。アルバイトに来た女子高生は、そんな置き去り児のひとりだったという噂がある。ある晩、営業を終えたスーパーの中で、この女子高生が意外な告白と告発を始めるのだが……。アイデアは面白く挑発的だが、最後にはザラリとした不快感しか残らない。

 『Nostalgic woods』。映画サークルで監督をしている学生が、恋人に振られた腹立ちと苦しさから撮影現場を放棄。ひとり踏み込んだ森の中で見つけたものは……。最後のワンシーンに落ちがあるのだが、それまでのダラダラした話が少々ウザイ。もう少し軽やかにやってくれると良かったんだけどな。

 『夢を見た』。ギャンブル依存症で自暴自棄になった男が、海辺で自殺しようとしたときに見たものは……。映像や語り口はシャープだが、最後の落ちがパンチ不足。それまでの世界観をひっくり返すだけの説得力がない。

 『りんご』。殺伐とした世紀末の風景。互いの食料を奪い合いながら生きる、ホームレス化した人々。全編ほとんど台詞なし。死滅して行く世界だ。主演は池脇千鶴。面白いか詰まらないか以前に、ちょっと暗すぎるんだよなぁ……。

 『隕石とインポテンツ』。カンヌ国際映画祭の短編コンペティション部門に、日本から3年ぶりのノミネートをはたしたという作品。巨大な隕石が頭上に停滞している町で、インポの夫と、欲求不満の妻が繰り広げる悲喜劇。あらゆる人間が広範囲に抱えている不安感や、先行きの見えない不透明感を頭上の巨大隕石に象徴させているようだが、物語自体は「世界は何も変わらない」という閉塞感で締めくくられる。隕石は落ちてこないし、夫のインポは治らない。今ある状況が良くないものだとわかっていても、人間はそれをどうすることもできない。

 『I'm Home』。放射能で汚染されて集団避難が行われた村に、老人介護施設から老女と老人がやってくる。老女は打ち捨てられた「我が家」に戻って来たのだ。老人は彼女を家に置き去りにして、ひとり川辺へと向かう。そこに施設の職員や家族が彼を探しに来るのだが……。原発事故によって生じた喪失感と、故郷を奪われた痛みなどを、コンパクトな時間の中に凝縮した作品。ハッピーエンドでは終われっこない話を、きちんとハッピーエンドではない形で終わらせている。

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8月24日公開予定 新宿バルト9
配給協力:ティ・ジョイ
宣伝協力:JAPAN SHORTS事務局、クリップロールコンサルティング合同会社
2012年、2013年|1時間3分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.japanshorts.jp
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
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