アウトロー

2013/01/08 パラマウント映画試写室
ライフル魔による無差別殺人に隠された真相とは?
トム・クルーズ主演の新シリーズ。by K. Hattori

Outlaw  ピッツバーグ近郊で起きたライフル魔による無差別殺人事件。現場に残された遺留品から容疑者の男がすぐ逮捕されたが、彼は「ジャック・リーチャーを呼べ」とメモに残した後、護送中に他の囚人たちから暴行を受けて意識不明の状態になってしまう。ジャック・リーチャーとは誰だ? 警察と検察がその行方を探そうとしていると、本人がふらりと警察にやってくる。TVニュースで事件を知り、容疑者の男を訪ねてきたのだ。彼は13年間陸軍に所属し、ずば抜けた身体能力と戦闘能力、さらに並外れた記憶力と推理力を持つスーパーエリート。だが除隊後は自由を好んで各地を放浪しているという一匹狼だ。彼は容疑者の弁護を担当するヘレンに請われて、事件の真相を探り始める。だがこのことを、快く思わない連中がいた。事件の背後には、まだ誰も知らない陰謀が隠されていたのだ……。

 イギリスの作家リー・チャイルドのジャック・リーチャー・シリーズは、これまでに17の作品が発表されている人気作品。日本でもそのうち何冊かが翻訳出版されているが、今回の映画はその9作目「One Shot」の映画化だ。シリーズ作品を最初の1作目から映画化しないのは、007シリーズもそうだし、ジャック・ライアン・シリーズも、1作目を除けばあとは映画化の順番がバラバラだ。「指輪物語」と「ホビットの冒険」も、時系列と作品の執筆順序を逆に映画化している。結局こうしたものは映画化しやすい、映画化して見栄えのするものから映像化されていくわけで、今回の映画も作り手の都合でこれが1作目に選ばれただけだろう。

 本作がヒットすれば続編が作られるはずだが、トム・クルーズ主演のシリーズ作品としては『ミッション・インポッシブル』という先行作品があり、それとの棲み分けが課題になるかもしれない。この映画は『ミッション〜』とは作品の方向性がまるで違うのだが、トム・クルーズが主人公を演じていることでそのオーラが作品に充満し、結果として似たような印象の映画になってしまっているのだ。トム・クルーズが好きな人には必見の映画だと思う。大スターである彼が、新しいヒーロー像に挑んだ意欲的な作品だと思う。しかし邦題で大上段に『アウトロー』と言い切った割には、この映画のトムに無法者の危険なムードは感じられない。トム・クルーズはやはりどこまでもトム・クルーズであって、どんな役柄であってもそれはトム・クルーズになってしまうのだ。役者とスターの違いについて、「役に自分を近づけるのが役者、役を自分に引き寄せるのがスター」だと誰かが言っていたように思う。トム・クルーズは今回も、どうしようもないほどに大スターであり続けている。

 黒人刑事を演じたデヴィッド・オイェロウォと、狙撃実行犯役のジェイ・コートニーは、今後ハリウッド映画で大活躍しそうな俳優たちだ。先物買いの映画ファンは要チェック!

(原題:Jack Reacher)

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2月1日公開予定 丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
配給:パラマウント映画
2012年|2時間10分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|5.1ch
関連ホームページ:http://www.outlaw-movie.jp
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
輸入DVD:Jack Reacher
原作:アウトロー(リー・チャイルド)
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