いま、殺りにゆきます

2012/11/20 サンプルDVD
平山夢明のホラー短編集から5編を選んで映像化。
話は面白くても作品としてはいま一歩。by K. Hattori

Imayari_2  平山夢明の実話系ホラー短編集「いま、殺りにゆきます RE-DUX」から5編のエピソードを選んで映像化したもの。監督は『AVN/エイリアンVSニンジャ』の千葉誠治。以下、各エピソードのあらすじと簡単な感想。

 第1話「わたしのししゅう」は、高校生の少女が道ばたで手製の詩集を売るホームレスに出会い、気まぐれに1冊を購入したことから、彼に付きまとわれるようになるという話。ヒロインを演じる森田涼花は「侍戦隊シンケンジャー」にシンケンイエロー役で出演していたので、番組終了後もこうして芸能界でちゃんと活動しているらしいことがわかって嬉しい。ただしこのエピソードは最後にホームレスがしゃべる台詞がまるで聞き取れず、なんだかよくわからないものになっている。

 第2話「おまけ」は、古書店で購入した本と一緒に入っていたDVDに予期せぬ映像が収録されており、しかもそのDVDの持ち主がDVDを取り戻しにやって来るという話。話そのものより、話の舞台になっているヒロインの祖母の家が唐紙の破れた廃屋のようなありさまで、まったく生活感がないのが疑問。話そのものがあり得るとかあり得ないと言う以前に、この家にヒロインがひとりでのこのこやって来て、ひとりで古本の段ボールを開いて、ひとりでDVDを見ているという状況があり得ない。

 第3話の「やあ、カタオカ!」は、出勤途中の若いOLが小学校時代の同級生らしい男に呼び止められるところから始まるサスペンス。ヒロインを呼び止めるオオトモ(?)のハイテンションぶりが強烈だが、その向こう側にある「狂気」が感じられず、単にひとりで盛り上がって空回りしているようにしか見えないのが残念。

 第4話「さよなら、お〜える」は、夜中に公園の公衆トイレに駆け込んだOLが、トイレの中で恐怖体験をするという話。恐怖体験の主体であるヒロインが、パンツ下ろしてトイレの便座に座った状況のままというのがそもそも滑稽な絵であるため、恐ろしさ以前におかしさが先に立ってしまう。ヒロインが恐怖に震え上がると、状況とのコントラストがより笑いを生み出してしまうというヘンなエピソード。

 第5話「いま、殺りにゆきます」は一人暮らしのヒロインが、部屋の中に潜んでいた男に突然襲撃されて恐怖の一夜を過ごすという話。これはヒロインが襲われるまでは不条理で面白いのだが、それ以降は過去の因縁話とストーカー話になってしまう。最後のオチも少し陳腐。

 どのエピソードも長編ホラー映画なら導入部に使えそうな引きの強さがあるが、それだけ取り出してしまうと「だから何?」という感じだ。ここにあるのはショックや戸惑いであって、恐怖とはまた別のものだろう。また各エピソードのアイデアは面白くても、それを映像化する際に映像ならではの仕掛けや工夫がない。映像がストーリーの絵解きに終わってしまっているのは残念だ。

Tweet
12月15日公開予定 ユーロスペース(レイトショー)
配給:キングレコード 宣伝:太秦 宣伝協力:アルシネテラン
2012年|1時間26分|日本|カラー
関連ホームページ:http://imayari.com
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
原作:いま、殺りにゆきます―RE‐DUX(平山夢明)
ホームページ
ホームページへ